伝送便編集委 フランスへ行く 2/2
 
(03/7.29)
 
 

  職員にICチップ
     効率化進む区分けセンター

  次に訪れたのは「イシー・郵便区分けセンター」、日本でいう区分局で、取り扱い物数はフランスでもトップクラスのセンターだという。広い敷地に建つ郵便巨大工場という印象で、韓国や日本の機械化工場と同じようだ。
  女性の広報責任者に局舎を案内してもらう。このセンターでは正規職員が450人、非正規が500人、3交替で働いているが、物量が少ない土曜日の20時から日曜日の20時の間は閉所するという。1年365日、24時間休まず動くという日本の普通郵便局やの区分局の常識からいえば、このラインをストップするというのは驚愕に値することだろう。

  さっそくドイツのシーメンス社製という読取区分機を見る。外観で日本の機械と大きく違うところは、太い管が何本も上に伸びている点だ。聞けば、読取区分中にこすれて郵便物から出る埃や塵を吸い出す管だそうだ。
  日本では防塵マスクをして作業する人もいるが、ほとんどは舞い上がる大量の塵埃を日常的に吸い込んでいる現状がある。除塵機が設置されていても騒音がひどいので回さない局所も多い。労働安全衛生上からみて、日本の対策の遅れは否めない。
  バーコード用のインクも、日本では特殊な揮発性・即乾性のエタノール使用の透明インクを使用しているが、フランスでは薄いピンク色の目に見えるバーコードが印字されるので、インクの人体への影響は少ないように思える。
  また、日本では区分口が郵便物で一杯になるとピーンポーンと警戒音が鳴り人手で取り出すが、このシーメンス社製では自動的に一杯になった郵便物を取り出し伝票を付けた後ビニールテープで把束するという日本の一歩先をいくものだった。
  さらに、日本でも配備されだした大型郵便物の読取区分機(フランス製)もあったが、やはり全自動で目を見張るものだった。聞けば日本の東芝からもこれを見学に来たという。
  こと機械化に関していえば、フランスの方が進んでいるという印象をもった。さらに品質管理の面でも、結束や区分方法等、事細かに記載したマニュアル表を作業ごとの柱に掲出し、誰でもそれを見れば作業の標準化がはかれるようにしているのだ。
  しかし、当然のことながら機械を入れれば人は減る。ラ・ポストは全国132あった区分けセンターを80に統廃合し、人員削減と非正規化を急ピッチで行っている。最新のセンターでは、何と非正規労働者の腕にICチップを着用させ、勤務開放中でも誰がどこにいるかGPS(衛星)で監視するシステムを導入したという。
  ラ・ポストは、一般の郵便局にも読取区分機は導入して人員削減を行う計画をすすめているほか、ビジネス地域での1日2度配達(現在は1度)や土曜配達(現在は個人差し出し信書のみ配達)を実施したいと提示してきた。SUD−PTTはこれらの合理化提案に対して、ストライキを含め断固闘う方針を打ち出している。
  先のフランス政府の打ち出した年金制度改悪に対しても、SUDはストライキで反対闘争を展開した。社会党系労組が屈服し共産党系も戦術ダウンする中、SUDへの共感は広まっているという。訪れた二つの局でも、各労組の掲示板で一番目立ったのはSUDで、他労組の中には1年前のニュースをそのまま掲示しているものもあったくらいだ。

  局食堂にはワインが

  ちょっと余談だが、食堂にはびっくりした。ワインや缶ビールを職員は食事しながら飲んでいるのだ。食堂の隣には24時間バーもある。さすがに勤務時間中はみんな控えているようだが、勤務前や終了後は飲むという。
  みんなで食事をしたが、魚のソテーとマリネ、サラダ、ヨーグルト、それにワイン(約1合で70円)もいただいて料金はたったの500円弱。レシートを見ると、実際の料金は約2倍で、ラ・ポストと食堂が補助しているのがわかる。福利厚生も進んでいるなあと思った。
  10年以上前に公社化されたフランスと今年公社になったばかりの日本の郵政事業、私の印象ではすでに一歩も二歩も日本の方が民営化が進んでいると感じた。効率化が進んできているとはいえ、フランスの郵政労働者には、まだまだゆとりがあった。5週間の夏のバカンスをみんな交替でとる、夕方には家に帰り家族や友人とゆっくり過ごす、文化の違いといってはそれまでだが、そこには「休むために働く」という基本がしっかりと根付いているのだろう。
  年金闘争でも「定年を短縮しろ」と郵便外務労働者たちはきつい労働から解放されて1年でも早く年金受給生活者になることを要求したという。サービス残業を繰り返したあげく過労死も顧みず定年延長を要求する労働者が聞いたら耳の痛くなるような話ではある。
  給料は少し安くても、できるだけたくさんの人が仲良く楽して働ける職場。そう、「郵便屋さんが笑っている」職場をフランスに見た。(池田実)                    2/2

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