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苦情処理制度が暴く施策の矛盾     (05.12)
2ネット施策と「郵便外務業務精通手当て」との矛盾を説明できない会社

郵政ユニオン呉支部は昨年5月から、「郵便外務業務精通手当て」の問題に取り組んできた。支部としては初めて、苦情処理協約に基づいて苦情処理共同調整会議で扱った。その報告をします。

郵政公社移行と共にそれまでの機動車手当てなどが整理統合されて「郵便内務・外務業務精通手当て」等が導入された。その特徴は、対象者一律支給だった手当てが、管理者の認定の要素が強くなった点にある。
  集配を対象にした精通手当ては、人事評価の業績評価4項目と「配達区の精通度合い」の合計点によって決まる。今回は後者、つまり「通区数の認定」について争った。というのは、手当ての導入時に公社がユニオン本部に示した「評価要領」には「通区数は通配区をカウントし、混合区は含めない」と記載されているからである。
  従来はこれで良かったのだが、2ネット導入と共に新たな問題が発生した。従来は通配区・混合を共に担当していたのだが、2ネットでは正社員が受箱区を担当する事が劇的に減少した。このままでは通区数が減少し、手当額が減少する事が明白だったからだ。

 取り組みの開始

昨年8月から今年1月の手当てが決まる「配達区の精通度合い」の自己評価の提出にあたり、呉支部組合員は受箱だけでなく対面区を含めて提出した。7月に返された評価結果は予想通り受箱区だけで評価されていた。
  会社の言い分は、「評価要領の通配区を受箱区と読み替えて評価した」というものだった。しかし自己評価の提出にあたりその様な周知はされなかった。2ネット実施の際も、その様な評価基準は周知された事がない。

  評価結果では、11名の組合員が自己評価より低い内容である事が判明し、4名が苦情申し立て、7名が苦情処理共同調整会議で苦情処理を行う事を決めた。
  敢えて二種類の方法を採ったのは出来るだけ多くの機会で会社と論争したかったからだ。
  「苦情申し立て」は支店の総務課長と対話を行ったのだが、最大の争点は評価基準の変更の根拠とその明示になった。
  会社の主張は二転三転した末に、結局は根拠となる文書を示す事が出来なかった。それでも「却下」の裁定を行ったため、中国支社に異議申し立てを行った。

 苦情処理共同調整会議

協約に基づき「支部調整会議」での形式審査を10月に終了し地方会議に移行した。11月に「地方調整会議」での事実審査が行われたのだが、「却下」の裁定が下されたため12月に「中央調整会議」に異議申立を行った。

  こうした経過を経て09年2月25日に本社会議室において「郵便事業会社・苦情処理中央会議」が開催され、「地方会議裁定書に対する意義申し立ての形式審査」を行った。
 その結果は、「手当ての評価基準の周知についてはしっかり周知するように指導していく」と支部の主張を一部入れながらも、整理内容は
 1. 結論『異議申し立てについては「却下」する。
 2. 却下の理由『基準の適用に重大な誤りがないので却下する。
  というものだった。

その中で、会社は初めて根拠とする文書を明らかにした。この文書こそこの間その存在が取りざたされ、論争の中心となった文書である。それは、07年11月6日提案の「平成一九年度の後期人事評価における定量的に示す業績評価の考え方について」と題する文書である。
資料  その中には、「2ネット実施支店では、通配区(受箱区)を何区通区出来るかにより認定」と書いてある。
  しかし、この文書は表題に示すように「人事評価の業績評価」に関する文書であり、業務精通手当てに関する文書ではない。おそらく会社は、調整会議を乗り切るために「拡張解釈」したのであろう。

 支配の道具としての人事評価

そもそも精通手当ての評価要領に「混合区を含めない」とあるのは、混合区を担当する者は「混合区がカバーするエリアの通配区に精通している」との前提がある。現場でも通配区を何区か精通した上で混合区を担当するというのが通例であり、問題は生じなかった。
  しかし、2ネットで受箱区は基本的にゆうメイトが担当し正社員は受箱区を精通しないままに対面区を担当する、という現状がある。呉支部が苦情処理をしたのはこうした背景があるのだが、本社の見解はこうした問題に正面から答えていない。

手当ての主旨は、出来るだけ社員に払われるように認定すべきものだ。しかし会社は複雑な認定基準を作り、その認定権を握る会社が労働者を支配するために都合良く運用している。人事評価や他の手当て、ゆうメイトのスキル認定などに共通する事象である。
  本来、2ネット実施の時に整備しておくべき問題を整備せずに見切り発車し、不備を指摘されたので慌てて拡張解釈で押し切ったに過ぎない。
  ユニオン中央本部は、2ネット実施支店では、対面区を含めて通区数を認定する事を求める要求書を本社に提出した。

苦情処理から見えた会社の馬脚

昨年8月に個人が行った苦情申し立ては更に混迷している。支店長の却下の裁定を受けて10月に中国支社に異議申し立てを行ったのだが、未だに結論が出ていない。当初、「支社から担当者が来て申し立て者に意見聴取を行う」と説明されていたのだが、年を明けても行われない。

支店総務課長に問い合わせをすると、「苦情処理制度ができた当初は支店が意見聴取をするようになっていた。その後規定が変わり意見聴取を行わなくても良くなった」との返答。
  何を今更と思いつつ本社のコンプライアンス部に照会すると、「制度発足の時から支社は意見聴取するようになっていない」との唖然とする返事が返ってきた。
  その後の人事異動で、支店長も総務課長も転勤になったのだが、申し立てから八ヶ月から経た現在も結論が出ていない、という事態になっている。

ここから見えてくるものは、会社は苦情処理制度が使われる事を想定していない、という事である。
  公社に移行し各種の人事評価が導入された。人が人を評価する事への懸念があり、それを補完するものとして苦情処理制度を作った、との説明だった。しかし会社にとっては、それはあくまでポーズにしか過ぎない。「制度は作ったが本当に使われるとは思わなかった」というのが本音だろう。

苦情処理を通して真摯に議論をする事が、評価と制度への信頼を高める事に繋がるのだが、会社にはその様な考えはない。会社が一度下した判断は変えないとの硬直した姿勢、判断の根拠を示さない閉鎖性、なにより会社の判断に異義を挟む事は許さない、との官僚特有の高慢な体質が見える。
  会社は呉支部の主張を押し切った訳だが、問題が根本的に解決した訳ではない。呉支部の取り組みは今後も続く。

(米今達也)