トップへ

JP労組第2回全国大会の空疎     (06.03)
職場運動よりエコ・福祉・選挙運動に集中

旧全郵政労組とJPUが合併し結成されたJP労組が6月17日から3日間、仙台市で第2回全国大会を開催する。日本の民間単一労組としては最大の組合員を誇るというJP労組だが、民営化で疲弊化が進む現場組合員にとって巨大労組の存在はますます希薄なものになっているのが現実だ。
  今大会では現書記長の難波奨二氏の来年参院選の組織内候補必勝に向けて「組織の総力をあげて取り組む」ことを意思一致することが最大の目的というのでは組合員はシラケる一方ではないか。
  今や現場では話題にも登らない全国大会の議案だが、その中身を紹介しながら問題点を洗ってみる。  (編集部)

大会議案書すべての活動を「難波奨二」必勝へ

第2回大会は本来ならば「基調大会」として向こう2年間の運動方針を決定する大会となるはずだったが、来年7月の参院選挙で組織内候補「難波奨二」氏必勝の取り組みに収れんするため、「具体的な運動展開にあたっては諸行動を後半の2010年度に振り分け」、運動の「選択と集中」を行うという。
  「選択と集中」といえば聞こえはいいが、要はJPEX始動にともなう現場の混乱と雇用不安などさしおいて、組合員を1年間「難波必勝」に総動員するという方針だ。
  第1回大会で設立決定された政治連盟「郵政未来研究会」(みらい研)への組合員加入を促進させ、潤沢な選挙資金をバックに組合員を選挙に駆り立て「上位での当選を目標」にする。その難波候補者の政治理念と言えば「絆(Kizuna)の再生」という無内容な「理念」。

「発足して間もないJP労組の組織力が問われる選挙」と本部は強調するが、本来ならば第2回大会で明らかにするとしていた「国の基本政策」(憲法、安保、人権、エネルギー等)に関わるJP労組「基本政策検討委員会」の報告が「議論が成熟していない」ことを理由に「継続課題として検討を進める」と先延ばしした中で、労組として何を理念に「組織内候補」を打ち立てるのか、組合員は「白紙委任状」で難波議員誕生に奔走しなければならないのか。

大会議案書当面する運動テーマが「エコ運動」

労組としての「基本政策」が打ち出せない以上、その運動テーマは無難なものとならざるを得ない。
  そこで議案では「当面する運動テーマを『地球環境』とし、『JP労組エコ運動』を構築」するというのだ。
  「全国にネットワークを有するJP労組が職場、地域、家庭等、それぞれの場面でエコ運動を実践することは、環境改善への大きな推進力であり社会に対するメッセージとなる」と謳うが、要はエコを材料に選挙運動を進めるという策略が透けて見える。
  エコを言うならば自分たちの企業、郵政グループがいかに環境破壊を推進しているかという現実から直視しなければならないはずだ。
  鉄道輸送を自動車輸送に、自転車配達からバイク配達へと、これまで効率化の名の下に環境負荷の高い施策を推進、最近でも集配センターの設置、2ネット配達方式の導入等により、走行距離を飛躍的に増大させ環境破壊に一役かっているのが現実だ。
  かたやヤマト運輸が鉄道輸送便を増やし、都市部での配達拠点を増大させ自転車や人力による集配を拡大して「エコ企業」を宣伝しているのとは対照的だ。

口では「エコドライブ推進」と言いながら、やっていることは「拠点集約化」や「局会社渉外部門の広域化」により1日100キロを越える長時間走行だ。
  ムダ、ムリを無くすというJPS方式も結局は、膨大な時間・人のロス、紙のむだ使いのオンパレード、これでは「環境破壊企業」と言われてもしかたないだろう。

福祉型労働運動「JP愛ネット運動」って何

参院選の取り組みとともに多くのページを割いているのが「福祉型労働運動」の項目。
  「生活者・消費者の視点から、街づくりや地域社会の改善に取り組むとともに情報発信の役割を果たす」「組合員の相互扶助活動であり、かつ地域社会に貢献するボランティア活動」というのが提起されている「福祉型労働運動」、その名称は「JP愛ネット運動(仮称)」。
  NPO法人の設立をめざし、会員はJP組合員、家族、OBを中心に構成し将来的には地域住民の参加を追求する。
  活動内容は、地域福祉活動として高齢者の生活支援、見守り、居場所づくり、子育て支援など、社会貢献活動として環境保全、国際貢献、地域活性化支援、労働相談など。
  会員間の福祉サービスを相互に交換し合うシステムとして時間預託制度(ボランティ
ア通貨)の導入も検討するという。
  2012年度からの本格展開をめざし、JP総研のプロジェクトと連携しながら具体化に向けた環境整備、体制構築を進めていく。

「福祉型労働運動は、企業内の枠を超えて地域社会や地域福祉への貢献を主な活動目的とする新たな運動展開」というが、労働組合運動の中心となるべき企業内活動はどうなるのか。前述の「選挙運動」「エコ運動」と同様、労働現場の運動の空洞化に拍車がかかるのは目に見えている。いや、日々の現場から目を背けさせようという意図があるのではとさえ思えてくる。

ユニオン・ショップ協定で組織肥大化

ユニオンショップ30万人組織建設の項では「ユニオン・ショップ協定締結」が前面に出ている。
  4月末現在、JP労組は、日本郵政11%、郵便事業会社52%、ゆうちょ銀行83%、かんぽ生命75%の事業場で過半数を超えているものの、協定締結に向けて過半数事業場80%の確立への行動を集中させる。
  ユニオン・ショップ協定については「労使の共通認識が醸成されつつあり、その前提条件となる職場過半数代表機能確立が極めて重要な課題」で、「過半数事業場80%確立のうえにユニオン・ショップ協定の締結を実現し、2009年度中を達成目標とする30万人組織建設につなげる」としている。

すでに一社化となった郵便輸送部門では日本郵便輸送との間でユニオン・ショップ協定を締結したが、「効力発動には各事業所別に過半数の組織化が必須条件であり、全国130事業所中22事業所が過半数の組織化に至っていないことから未加入者の完全結集と期間雇用社員の組織率50%以上達成」をめざすという。
  効力発動となったならば新入社員はJP労組へ強制加入となる。
  もちろん組合を脱退したとしても解雇とはならないが、労使一体化は飛躍的に進み、未加入者や少数組合員は疎外される全体主義職場が出現するのだ。

言いなりのJPEX対応

本大会の最大の焦点となると予想されるのがJPEX問題である。
  「JP労組として郵便事業会社とJPEXの成長・発展に向けて積極的に対応していく」というスタンスを打ち出した本部は、「開業後3年で単年度黒字化」という至上命令のもとに、大幅に伸びる労働時間の短縮や低下する賃金水準のアップの要求を、「事業発展のためのコスト競争力を確保する必要がある」と断念した。
  5月8日の交渉では、当初の労働時間2080時間を2056時間とする、定期昇給制度を構築する、契約社員から正社員への登用制度を確立する、契約社員の服喪休暇等を有給化する、契約社員の実質的な昇給制度を導入する等、「一定の前進回答を引き出した」と大綱整理をはかった。

だが問題は山積している。
  総務省が宅配便統合に関する郵便事業会社の事業計画の変更を求めたことに示されるように、統合計画には当初から様々な疑問点が投げかけられている。
  委託手数料、要員計画(出向者復帰後も含む)、信書の秘密の保持、利用者利便性の確保等、総務省の認可の条件は多岐にわたっており、はたして今年10月1日の本格始動が実現するか危ぶむ声も出ているほどだ。
  いまだ日本郵政グループの「中期経営計画」が出されない中、統合に踏み切った経営判断が今問われているのである。
  このままではJPEX・郵便事業会社の成長発展どころか共倒れさえ危惧されるのだ。

今、期間雇用社員を中心に大きな雇用不安がひろがっている。
  会社は「期間雇用社員の契約替えにあたっては、原則、郵便事業由来のJPEX拠点への契約替えで対応し、それでも郵便事業会社支店の労働力に余剰が発生する場合は、日通由来のJPEX拠点にも契約替えを行うとともに、周辺の郵便事業会社支店等への雇用斡旋を行うことにより雇用の確保に全力を尽くす」と述べたとしている。
  正社員の出向数の確保、期間雇用社員の契約替えに関して、会社はJP労組に協力を求めている。

本部は「期間雇用社員の雇用不安を発生させないことを第一義に要員措置課題に対応していく」としているが、「事業発展のためのコスト競争力を確保する」ためには要員計画の見直しなど求めるべくもなく、最終的には労使による説得という事態さえ予想される。

「頑張ったものが報われる」か、新人事・給与制度

議案書JP労組は昨年の第1回大会で「新時代における新たな人事・給与制度の実現」を打ち出し、仕事への積極的な取り組みが評価される制度、インセンティブの構築、透明性の高い評価の確立、年金受給まで働き続けられる複線的な制度の確立、の基本方針を決定した。
  今年4月27日郵政グループ各社は「人事・給与制度の概要」「各種手当制度の概要」を提示、本部は「総体的には頑張ったものが報われる制度の組み立てとなっており、現行制度と比べてもよりメリハリが大きなものとなっている」と評価しつつも、再度会社案に対する要求書を提出すると先延ばしした。
  労働力政策についても、「中期経営計画の考え方が示された段階で論議を開始する」としていたことから進捗なし、今後は「新たな要員算出標準」など各種調査結果等についての説明を強く求めていくとした。

格差社会を生み出した元凶の一つとされる成果主義・能力主義への批判が噴出する中、組合としても会社の提案を鵜呑みにするわけにはいかず「必要な見直し」を求める姿勢は示したかっこう。
  労働力政策についても、郵政ワーキングプアとも評されるゆうメイトの存在について「これまで進められてきたコストカットを目的とした常用代替として非正規化施策は、一時的な企業収益の改善はあったものの、結果として生産性の大幅な低下を招き、訓練・研修を含めた膨大な雇用コストを生み出し」と批判、また郵便事業における各施策(転力化施策)の総括と見直しが不可欠としている。

統合は負の相乗効果

歴史的統合から2年目を迎えるJP労組、すでに支部・分会レベルでの組合統合が終了し形の上では一つの組合が完成、本部の言う「創成期」に終わりを告げ、来年からは民営郵政の株式上場を見据えた新ステージ「変革期」に突入することになる。
  それぞれの歴史を持ち文化も違う組合が統合することで新たな相乗効果が発揮されるというが、統合は融合ではなく組合の溶解を招いているのが現実だ。
  組合は巨大化したが、組合離れが加速し、空洞化が進むという負の相乗効果しかもたらしていない。

 日本郵政は、先頃発表した3月期連結決算でかろうじて黒字を出したものの、来年度3月期の業績は減益を見込んでいるという。はたして来年度の金融2社の株式上場は可能なのか。
  「かんぽの宿」「低料第三種」と問題続きの日本郵政、西川社長の去就も注目される
中、労働組合の存在感はまるでない。この重大期にもかかわらず、大会議案には危機感もなく、状況を突破する方向性が全く見えない。
  苦悶する現場組合員とかけはなれた巨大労組の空疎な議案というしかない。

(編集部)