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【伝送便インタビュー】 元「特定局長」に聞く     (07.02)
「小泉―竹中は、直接現場に視察に来い!」

「民営化前までは68歳まで働けたんだが、今は65歳定年。正直私ももうこれ以上はからだが持たないよ。(笑)」
  今年定年退職されたばかりの元「特定局長」にお話を伺った。約2時間、民営化後の現場の矛盾を一つ一つ諭すように語られた。聞き手は編集部。
  話はやはり今話題の西川社長の進退問題から始まった。

全特総会「(経営の)中身が分かってくるとやはりいろいろな問題が明らかになってくる。不透明な問題や納得いかないものがかなりあると。西川さんは彼を支える勢力もあるから断固として続けるおつもりだろうが、それに対する反対の包囲網もある。ただ、西川さんが辞めて郵政官僚復活ということになるとこれがまた世論が許さないだろう。水面下で人選が進んでいるようだが、一筋縄ではいかないだろうな。」

お話を聞いた時点ではまだ鳩山総務大臣が孤軍奮闘していた次期。マスコミ上では次期社長候補として具体的な民間人の名前も上がっていたが、結局は「西川さんを支える勢力」が寄り切った格好になったのは周知の通り。

 現場を何も分かっていない

「白黒のバイクが配備されたでしょう。郵便局のバイクは赤でしょう(笑)。それが町の風景になっていたり、あぁがんばってるんだなぁという信頼にも繋がっていた象徴の色でしょう。だいたい50CCでどうやって山道を走れっていうんですか。まして冬場の山道だったりしたら。いかに白黒バイク現場を知らないかということだね。」
  「ドアフォンでゆうちょ銀行だ、かんぽ生命だと言ってもドアを開けてくれない。郵便局ですと言ってやっと開けてくれる。それが信頼というものだよね。ましてや白黒のバイクで行った日には身分証明書を見せろということになりますよ。(笑)」
  「タイヤの問題もあったね。雪道に弱いタイヤをはかせてね。職員の命にも関わるものを一体何を考えているんだと言って交換させたこともありますよ。ことごとく現場を知らない。もしくは知っていても採算性ばかりを優先させているのか。そういう問題点は山ほどあるんですよ。」

「集荷の問題ね。自家用車を使うこともだめになった。郵便局は地元に密着して地場産業の振興にも貢献してきたんだが、これが危うくなっている。なんで来られないんだとお客さんに怒られてね。分社化になりましてなんて説明しても分かってもらえないよね。僕らがサボってるんじゃないかという感覚ですよね、お客さんにしてみれば。」

 6万ページのマニュアル

「今の弊害はやはり事業を分割したことですよ。とりあえずは政府が持っている株の放出を止めさせることが第一歩、次ぎに分社化の見直しをきちんとやらなきゃいかん。我々郵便局は手数料だけで食って行けと言うんだから、これは夢も希望もないし、だいたい経営が成り立っていかないですよ。三事業一体でしかきちんとしたサービスを提供することはできないんだから。」

「問題はね、銀行法や保険業法が適用されたでしょう。銀行と同じことを郵便局もでやれと。慢性的な人手不足の中で、貯金窓口のバックアップの人間を置けと言われても、二人局の所なんかどうするんですか。(笑)」
郵便局マネージメント必携  「システムがまったく整備されていないのに法を適用させようとしても無理があるに決まっている。私の所には満足な紙幣精算機もないんだから。」
  「民営化になって現場に下りてきたマニュアル、6万ページですよ。読んでいたら仕事になりませんよ。(笑)」

「簡易局が次々に廃止になったのもこのせいでね。今100局ぐらい復活しているというのだけど、貯・保業務も復活させたところはほとんどありませんよ。これは簡易局じゃないですよ。ただの郵便販売所ですよ。」
  「地域から金融機関がなくなっているんです。生活決済としての金融機関がなくなると地域は成り立ちませんよ。」

「現場の最前線を担っているのは今や非正規労働者でしょ。銀行法や保険業法では資格が必要になってきます。資格を持っている正社員の所にお客さんが並んでいても手伝いもできないわけです。何をやってるんだ、と怒鳴られますよね。非正規も正社員も精神を病んでらっしゃる方がいっぱいいるんですよ。」
  「にもかかわらず経費を削減しろ、超勤を減らせと。地域の祭りなどに出店しようにも社員には超勤が出ない。結局私らが出かけていくしかない。無料奉仕ですよ。(笑)」
  「地域とのお付き合いは大事なんですよ。現場の職員も直接地域の方々とふれあうことでやる気も出てくるものなんですよ。今それができなくなったんですよ。」

かもメール営業「営業目標ね。一つ一つの商品に対して前年比何%という形で下りてきます。社員一丸となって一生懸命目標を達成して、税金も納めて、なにがしかの黒字が出るとします。ならばその収益を地域の困難局の人件費や設備投資などに回せばいいじゃないですか。そういうことが何もないんですよ。だから夢も希望もなくしてみんなやる気をなくしてしまう。」
  「しかもその収益とは商品の売り上げによるものではなくて、人件費を削り、超勤を削り、ギリギリの経費節減による黒字化ですよ。これは健全な企業経営とは言えないでしょう。」(ため息)

「経営はじり貧になるしかないですよ。だからといって新規事業開拓だと言ってね、化粧品を売ってみたり、引っ越し屋さんを紹介してみたりとか(笑)、そんなのはたいした収益源じゃないですよ。そもそも6万ページのマニュアルを読みながらさらにコンビニまでやれと言われても、もう容量的にオーバーになっちゃう。」

 硬直・非効率的な組織運営

「そのあげくに業務改善指導が下りてくる。それも本社から直接に。全国2万4千局を本社が直接管理しようとするものだから、うまくいくはずがない。」
  「連日のように大量の意味不明の文書が下りて来る(笑)。支社に問い合わせても分からないと。今支社にはなんの権限もない。予算はないわ、地域に合った経営判断はできないわで、すべて本社から直接指導が下りてくる。」

郵便事業会社の場合は支社機能がそれなりに機能していると思うのですが局会社の場合は仕組みが違うのですか?本社から直接指導が下りるということは支社は単なるトンネル?

「そう、そう。だから現場でこういう商品を売ったらとかここを改善すればとか言っても、いちいち、本社にお伺いしておきますと(笑)。だからそれはもう時間がかかるしロスが増えるよね、まったく非効率的だよ。」

いわゆる『部会』の機能は今どうなっているのでしょう。

「それも今名前が変わったんだよね。なんだっけ(笑)。僕ら局長会の方は今でも部会って言ってるんだけど、会社の組織上は何々地域・地区ということになっている。範囲は部会と一緒なんだけど、中身は変わっちゃった。」
  「昔は頻繁に集まって情報交換したり自主的に勉強会をやったり、いろいろ局間で融通し合ったりしていた。土曜日には職員にも超勤をかけて業研などをやっていたのだけど、今は超勤をかけられないから業研もろくにできない。みんな忙しくてそもそも集まってこない。地域の状況がどうなっているのかもう分からないんですよ。」
  「だからそういう自主的な地域の機能というものがまったく低下してしまっている。」
  「会議は支社主催のものが定期的にあるのだけど、もう本当に通り一遍の形式的なものですよ。」

「民営化になるときに2千名の特定局長が辞めている。それまでは年間平均して7~800名だったのだが。今もどんどん辞めていってる。若い局長などは職員より手取りが少なかったりします。持ち出しが多いですからね。やる気が起きないよね。」

 また暑い夏がやってくる

「物品調達がね、一括調達にされたでしょ。地域で物を買えなくなった。地域で買うとそこで営業もできるし長いお付き合いもできるんですよ。地域の企業とのお付き合いも生まれてお互いがんばりましょうということになるじゃないですか。そういうのが断ち切られて、営業のきっかけさえつぶしてしまうという、そんな会社がありますか?」

西川善文その一括調達先というのが三井住友系列の会社だと(笑)。

「しかも、地域で買うより単価が高かったりするんですよ。(笑)」
  「このままどんどん地域との繋がりがなくなっていくと、お客さんが他の業者に流れていってしまう。あたりまえですよね。そうすると収益がますます減ってしまう。」

「職員の人事異動の問題、あれも地域の宝を放り出しているようなものだよ。あれでも相当数辞めていってるでしょ。局長もね、今度10年以上の者は異動させると。これをやったらもう局会社はおしまいだね。」
  「非正規労働者もね、昔は派遣なんてこの国にはなかったんだからね。こんなに非正規を増やしたら現場の社員同士の連帯感なんて生まれてこないよ。職場がギスギスしていくだけでますますみんなやる気をなくしてしまう。」

話は4年前の「郵政選挙」に及び、暑く長い夏の闘いの日々を思いだしてしまった。そしてまたその夏が訪れる。

「今度の選挙はね、私たちも全力で闘いますよ。民間会社になったのだからね、大手を振って選挙運動できるんだから(笑)。」

お忙しいところありがとうございました。

(文責 多田野 Dave)