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楽しみながら村興しをするのよ     (08.13)
─檜原村から見えてくるこの国の貧困と地域の可能性

崖っぷちの郵便屋さん今年2月、檜原村を再訪した際は主に崖っぷちを走る郵便屋さんの姿をWeb上で報告したが、実はそのときに丸山美子村議からも長時間お話を伺っていた。
稲垣さん  今回の特集にあわせて、過疎地域の村の再生のために奮闘されている丸山氏のお話を改めて報告したい。
  ご報告が遅れてしまいましたことをお詫びします。

ここが都下とは思えないほどの緑深い山間の集落、檜原村。
  丸山氏はそこの村議として、そこの生活を守り続けるにはどうしたらいいのかという問題意識を持って活動されておられる。
  民営化直前の集配局再編の際にも何度も都心に向かわれ国会内で直接現地の状況を訴えられてこられた。郵便屋さんが地域のライフラインを担ってきたことを、正直私たちもそのときに改めて痛感させられた。

民営化後に改めてお話を伺った際、状況は実はそれほど変わらないという。
  「民営化されたからといって仕事が雑になったりということはありません。従来どおりのサービスを維持しようと、配達員の皆さんは雨の日も雪の日も配達にきてくれますし、毎日、地域のお年寄りに声をかけながら、何か変わったことがないかどうかを見てくれています。このまえも台風で土砂崩れがあったのですが、その前に地割れしているのを配達員さんが発見してくれていて、事前に通報してくれていたからすぐに対応できた。日常的にその道を通っている人でないと分からない」。

ただし、実際に配達している例の崖っぷちを走っていた郵便屋さんは、「やっぱりサービスは以前よりは落ちている。配達時間も遅くなっているし、時間に追われてゆっくり地域の方と話している時間もない。」
  実際丸山さんも、急ぎの郵便はやはり15キロ離れたあきる野支店まで車を走らせるとのこと。村には高齢者も多く、そう頻繁に山を下りることはできない。民営化の影響はじわりじわりと地域の弱者を追い込んでいく。

丸山家で「生活圏内にないとおかしいでしょう。郵便局に限らず、ライフラインを支えてきた公的機関がどんどん村からなくなってきてるんです。JAも撤退しましたし、小学校も統廃合で以前の八校からとうとう一つだけになってしまった。」
  村には豊かな環境があっても住める条件がなくなってくる。郵便局があって病院があって学校がある、その繋がりの中で人々が生活していける条件が整う。そしてそのような公的機関が、少ないながらも地域の雇用を支え、それが基盤となってまた村おこしの展望も可能になってくるのだと。

「都会ならお金さえあれば、一人で何とか生きていくこともできます。だけどここでは地域の助け合いがなければ、雪かきひとつもできない。学校が統廃合され、役場では人員削減が行われ、郵便局も人がいなくなり、どんどん住めなくなってしまうと、そういった地域のコミュニティも維持できなくなる。」

地域のコミュニティーを再建するための様々なアイディアはないわけではない。例えば林業の再生とか、地域の農産物のブランド化といったものもあるだろう。
  問題はそのようなアイディアを根付かせるまでの時間をどう繋いでいくのか。行政からの支援は単年度単位となることが多く、結局中途半端な取り組みで終わったりする。

  「下水道を引くという話があります。ただ、私の家のような山の上までは当然引けるわけはないのだけど、とりあえずできる所は繋ぎたいと。ただ、せっかく家と家とを繋いでも、もしそこが引っ越してしまうと無駄な投資になってしまう。村には下水道がなくともこれまで独自のシステムを築いて処理してきた。山には山にあったシステムがあるのだからそういう所を援助してもらった方が効率的だと思うのです。」

地域の実情にあった、長期的で持続的な取り組みが問われている。そのための下支えこそを行政がきちんと担っていくべきでしょうと。
  「下水道のような公共事業はね、工事をするまでは援助資金なのだけど、それを維持・運転していく資金は地域に負わされるのね。結局財政的にますます困難になっていくわけですよ。」

 湯久保会館青空民主主義

丸山さん宅の隣には湯久保会館という自設の公民館がある。定期的に、または何か問題があるときに三々五々地域の方々が集まっていろいろと話し合いをする場になっている。
  「自分たちでやれることもあるのですよ。財政的には大変なのだけど、自分たちでやるわけだからけっこう楽しめてやれるのよ。」
  手をこまねいて地域の崩壊を見ているわけではない。できる所からできうる範囲で地域の人々と話し合いながら地域を創っていく。少しずつ、楽しみながら。

  そしてそのような取り組みをさらに行政をも巻き込んで拡げていくこと。今回訪れたときも農水省の支援事業を受けるための村独自の事業の立ち上げを丸山さん達が企画していた所だった。
丸山美子村議  「事業はそこに住む住民主体、住民のアイディア。予算の会計は村の行政が入って、全体予算の支援を国が行う仕組み。」
  旧い道を復活させて遊歩道を整備したり、間伐をしてそこにちょっとした遊び場を作ってみたり、と、事業計画を話されるときの丸山さんの笑顔が印象的だった。

地域再生のために村の自治をどう再構築すべきか、まずは実践、丸山さんはそう問いかけているように思える。私たちこそ、その実践に寄り添える実は一番近い存在になりうるかも知れない。
  郵政事業の見直しとその再建が問われている。地域にきちんと貢献し、その下支えをできる事業へ。

(多田野 Dave)