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私たちの社会を取り戻すために     (08.28)
「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」第5回総会&市民討論集会、報告

小泉―竹中路線の一掃を

選挙戦まっただ中の8月23日、「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」は第5回総会と市民討論集会を開催した。小泉―竹中路線の4年間を総括し、郵政民営化の見直しを通して社会の再生をと訴えた。

東京神田の区民会館、真夏の総選挙戦真っ最中、投票日一週間前のそれも日曜日にもかかわらず、会場には「ネットを見て」という方も含めて30名が駆けつけて頂いた。
  集会前段は監視ネット5回目の総会を開く。4年前の郵政選挙以来の総選挙という節目を迎え、これまでの活動報告は監視ネット結成時に遡った5年前からの主な活動を編集したビデオを上映してそれに代えた(これは後ほどネットに上げる予定)。
勝利のくす玉も割れたはず・・・  4年前、これも真夏の炎天下、連日のように駆けつけた国会前での座り込みに抗議集会。8月8日、参議院での民営化法案否決の報に国会前では歓声が上がり、くす玉も割れた次の瞬間、小泉元首相の顔が大写しにされると会場から苦笑も漏れる。何度も檜原村に通い、遠くは五島列島にまで押しかけ、結成総会時の佐高信氏から金子勝氏、杉田敦氏、青木秀和氏という講師を招き、市民シンポジュームにネット公開用のビデオ、途切れがちながらなんとかニュースも発行し続けという、あらためてこの5年間の映像を観てみると、地味な団体の割にはけっこう盛りだくさんの活動が映し出された。
  総会は新たに稲垣豊さん(アタック・ジャパン)を代表に選び、今後の活動方針は後段の集会討論の中で、監視ネット独自の「民営化見直し論」を提起するかたちで代えていきたいとの報告。5分ほどの休憩の後、早速市民討論集会を開催した。

パネルディスカッション

   まだまだ闘いは続く

問題提起をするパネラーを以下の4氏にお願いした。
  秋本陽子さん(アタック・ジャパン)、清水直子さん(フリーライター/フリーター全般労働組合執行委員)、下見徳章さん(民営化監視ネット事務局)、棣棠浄(ていとうきよし)さん(郵政労働者ユニオン中央執行委員)

  まず棣棠浄さんから、そもそも郵政民営化とは何だったのかという、その前史も含めて総体的な総括が語られた。
  旧くは80年代初頭のレーガン・サッチャーイズムから始まり、日本では中曽根行革による国鉄分割民営化によって新自由主義の口火が切られた。次の橋本行革では財政投融資の廃止と中央省庁の再編が行われ、郵政省は郵政事業庁へ、その後公社へ。一方海外では規制緩和・公共事業の民営化が先行して進んでいた。
棣棠浄さん  周回遅れの新自由主義者といわれた小泉首相は、民営化はしないという文言が公社法には明記されていたにもかかわらずそれを反故にして、劇場の幕を開ける。ここに世界的な流れとしての新自由主義の完遂がこの国でも断行されたという構図だ。
  では、断行された新自由主義路線によってこの国は、とりわけ郵政事業はどうなったのか。

まず、全国ネットワークがほころびてきた。全国1048の集配特定局が統廃合され、400局の簡易郵便局が廃局。4分社化によって事業の効率性が阻害され利用者の利便性も著しく阻害されだした。サービス低下が利用者の目にも具体的に明らかになってきた。そして労働現場では正規社員の非正規社員への置き換えが進み、今やこの国最大の非正規労働者を雇用する「民間」会社となった。

先のかんぽの宿問題などは、民営化とは結局は利権の付け替えでしかなかったのではないかとの疑念を普通の市民にも抱かせた。不正ダイレクトメールや簡保不払い問題、宅配便事業統合の認可先延ばしなど、次々と事業ガバナンスに関わるスキャンダルが噴出し、もはや民営化のメリットが何かを探し出す方が難しいといった状況だ。それでも竹中は探し出すだろうが。

そして総選挙。現野党各党は民営化の見直しで一致しているというが、政府持ち株放出の凍結はともかく、分社化を見直す事業形態そのものの改革となると一筋縄ではいかないだろう。民主党が議席数で単独過半数ともなると、私たちの闘いはさらに今一歩踏み出さなければならないかも知れない。

 公共性が問われている

下見徳章さん次に下見徳章さんから地方の特に山間・島嶼部過疎地の状況が報告された。
  檜原村、新上五島町の人口推移統計が示される。「順調にこのままの減少率で人口が減っていくと、あと30年を経ずしてこの地域は神秘の秘境と化してしまうことになります」。
  新上五島ではもう郵便局は要らないとまで言われたのがショックだったと。それだけ地域から郵便局の影が薄くなってしまっている。詳細はすでにこの誌上でも数回にわたり紹介されているのでこの場では割愛させて頂くが、公共事業の崩壊と共に地域も崩壊していってる現状から、再度その公共性の再構築が求められているだろうと締めくくった。

 間違った雇用政策

フリーター全般労組の役員もなさっている清水直子さんからお話しを伺った。フリーター全般労組の組合員は20代から30代の方が80%だという。
清水直子さん  「彼らに聞くと、職場で自分を尊重されたことがないという気持ちを共通して持っていることです」「次の職場でも使い捨てにされるのではないかという思いを最初から持って働いています」。まともな研修もないにもかかわらず即戦力として働かされる。職場で人間関係を作ることもできない。常に疎外されている。
  また、現在年収200~300万ほどとして、ではこれから年齢を重ねるにつれて収入が上がるかというと、40代になっても50代になっても変わらない。将来展望が奪われたまま働き続けることを強いられる。さらに年を取るにつれて条件の悪い過酷な職場しか見つからなくなる。
  派遣業種の解禁によって止めどなく間接雇用が拡大している。止めどなく時間あたりの賃金単価が下がっている。

公務員のバッシングが頻繁に行われているが、これは非正規労働者が増えていく過程に比例していることも指摘された。足の引っ張り合いになっている。そして公務員の現場でも非正規労働者が増えている。同時に正社員の安易なリストラも進む。これら労働現場の荒廃はすべて非正規労働者の増大に比例しているのだと。

 終わらせるまで終わらない

最後に秋山陽子さんからこの間の世界の動きから、新自由主義―グローバリゼーションの破綻の具体的な状況を俯瞰して頂いた。
秋本陽子さん  08年秋の金融危機、これは私たちがいずれ破綻すると確信していた事態が現実化したものに他ならない。それ以前にもアジア通貨危機やITバブルの破綻等いくつもの危機を重ねながら、ついに新自由主義の総本山ともいえる金融システムの中枢を危機が襲った。金融工学という結局はカジノ資本主義を煽っただけのまがい物の化けの皮が剥がれたということだ。

ただ、この4年間を見ると、世界の中で新自由主義路線から脱却しようという動きも具体的に起きてきている。中南米諸国のいくつかの国では様々な試みが今現在行われている。
  ただし、新自由主義はまだ終わっていない。中国・インドを始めこれまでの新興国の台頭をにらんで新たな世界経済秩序の再編成の試みが始まっている。G8からG20という流れがそれを象徴し、アメリカ―オバマ体制による世界戦略も、この新たな世界の力関係の中でいかにアメリカを中心とした資本蓄積体制を維持していくかという戦略の外に出るものではない。

新自由主義路線は簡単には終わらない。ただ、世界ではこれを乗り越えようとする試みも様々なセクター、地域で始まっているのも事実。そしてこれらの試みに共通しているのが、社会的な公共セクターの再評価ということではないだろうか。
  公共サービスは雇用を作り出す、社会的連帯を生み出す、社会的公正さを実現する、このような共通のスローガンが世界的に拡がっていくようさらに運動を進めていきましょう。

 そしてこれからも

時間もおしてきたがその後会場を含めての簡単な討論や質疑応答を行い、その後監視ネット独自の民営化見直し論を提起。さらに集会アピールを採択し、特にこの日から一週間後に迫った総選挙投票日に向けた決意を表明した。これら二つの文書については後日ネット上で紹介される予定なので是非皆さんにもご検討頂きたい。
  今、時代の変わり目に私たちは立ち会っているのかも知れない。しかし困難はまだ大きく横たわっている。闘いは未だ途上だ。

*<資料>
 ・監視ネット「郵政民営化見直し論」
   郵政民営化の見直しと公共サービスの社会的確立を (PDF275KB)

 ・監視ネット第5回総会アピール (PDF123KB)

Ubin Watch Video 監視ネットの5年間

(多田野 Dave)