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郵政改革基本方針を問う     (11.02)
私たちの側からの本物の改革をかちとるために

10月20日、カメラの向かう側でまさに憮然とした表情で西川善文氏辞意表明。前日、亀井郵政改革担当相がいよいよ引導を渡したということが報じられてのもの、と誰もが思った翌日にはもう新しい人事の発表があった。いろいろ不規則発言で物議をかもす大臣というイメージを煽ってきたマスコミの完全に裏をかいた、周到に準備された人事刷新劇である。
  民営化見直しの基本方針が閣議決定なされた日付も20日だから、この日は政権にとっては文字通りちょっとしたXデーであったわけだ。政策決定プロセスのガラス張り化といった民主党の日頃の喧伝には似合わない、なかなか鮮やかな演出ぶりである。

新社長、斎藤次郎・東京金融取引所社長、元大蔵事務次官。鮮やかな政治ショーを演出した割にはルーキーに選ばれたのは73歳の元官僚。現役官僚から離れてすでにかなり経つというが、よりによって元大蔵官僚とは、マスコミならずともうならざるを得ない。
  かつてその資金を一括して大蔵省に預けていた時代、資金の自主運用を長年の悲願としてきた旧郵政省にとっては常に頭を押さえつけられてきた省の中の省であったはずだ。もっとも、01年にその財投改革がなされて以降も、資金の自主運用には依然ほど遠かったわけだが。
  大蔵官僚当時「カミソリ次郎」などという異名を取っていたとマスコミははやし立てるが、その切れ味未だ健在だとしたら・・・。

94年、時の細川政権崩壊の引き金を引いた消費税3%(当時)から7%の「国民福祉税」の構想を練ったのが斉藤次郎氏だと言われる。カミソリの切れ味がよすぎたのか、その後の自民党復権後は不遇をかこったという。その細川政権時代から現民主党小沢一郎幹事長との縁の深さが取りざたされる。07年、自民党の福田政権と民主党との大連立構想の陰にも氏の名前が挙がっていたというから、確かに大物なのだろうが、この構想も承知のように日の目を見なかった。やっぱりカミソリの切れ味が鋭すぎたのか。
  郵政改革の切れ味はどうか。また構想倒れに終わるのか・・・。

郵政改革基本方針の志やいかに

と、これからの人のことをあれこれ邪推しても始まらない。とりあえずは20日に閣議決定されたという「郵政改革の基本方針」の検証の方が先だろう。三事業一体化へ向けた筋道を付けたというが、株式会社として民間会社の体裁はそのままである。 
  簡単に順に見ていこう。

第一項、ここでは「あまねく公平に」という文言が筆頭に復活していることに注目したい。
  郵政民営化法でも郵便事業の項目には同様の言葉があるのだが、その冒頭の総則には、「自由で活力ある経済社会の実現」とか「自由な競争を促進し」とか「対等な競争条件を確保する」とか、まぁ自由と競争のオンパレードである。郵政事業全体として「あまねく公平に」という文言の復活にいにしえの郷愁を覚えるのは私だけか。
  続いて、「利用者本位の簡便な方法により、郵便局で一体的に利用できるようにする」という表現が三事業一体化を担保したものだろう。

第二項。「格差を是正するための拠点」とある
  皮肉だと感じるのは貴方が現場労働者の証だということ。郵便局は今や格差そのものの拠点である。何よりまず最初に我が郵政グループ全職場の非正規労働者の均等待遇こそが求められる。さらに、格差を助長する「新賃金制度」などもってのほか。成果主義賃金の是正、いや廃止こそが職場にも「あまねく公平」な文化を浸透させる第一歩だろう。

亀井大臣が郵便局でも介護や年金などの業務を請け負えないかというアイディをぶち上げたが、これなどは「地域のワンストップ行政の拠点」という表現と重なる。
  実はこの案については総選挙前からすでに民主党・国民新党合同の研究会等で検討されていたものともいわれている。まぁ悪い話ではないと私も思う。現場職員の介護休暇の充実や非正規労働者への正社員と均等な年金支給という条件が整えられることが先決であることはいうまでもないが。

第三項。銀行法、保険業法の見直しは郵便局長の悲願。これなくして業務は回らない。株式会社としての民営会社形態はそのままとするから特別立法によってこの二法をはずすことになるだろう。
  「地域金融や中小企業金融にとっての役割に配慮」とある。すでに信用金庫との連系といった案もまた亀井大臣は打ち出している。地方金融機関の地場産業融資からの撤退や貸しはがしなどを念頭に置いたものと思う。地方の経済に貢献するのならばこれも一つの案だと思うが同時にリスクも背負い込むことになる。具体化には慎重な議論が必要だろう。

第四項。ここでは、改革といっても民営会社という経営形態には手を付けませんよと念を押している。
  フランスの例。ここは未だ公社のまま。サルコジはこれを一旦国全株持ち株の株式会社にして、その一部株式を「公的機関へ売却する」という方針を打ち出している。世論は、実質的な市場への株放出、郵政事業の民営化だと反対し運動が拡がっている。我が国でも、次の政権交代時の方針がどうなるか分からない。いや現政権でさえいつ気が変わるとも分からない。はっきりと、将来的な公的企業への復帰展望を指し示すべきである。

第五項。情報公開とアカウンタビリティの確保といったところか。
  原則的な言い回しになるかも知れないが、伝送便としては労働者・市民による事業の自主管理という目標を掲げ続けるのである。

第六項。郵政民営化法の廃止。
  この民営化法というのがやたら分厚い法令集だということを知っていました?これだけで資源の無駄だったというわけで、新しい法は少しはエコになるでしょうか。

26日から始まった臨時国会では株式凍結法案が先に可決されることになり、抜本的な改革に向けた具体的な立法化は来年の本国会を待つことになる。その準備はすでにかなり周到に進んでいると見た方が良さそうだ。
  24日付マスコミは先の選挙で落選した国民新党の亀井久興氏が総務省非常勤顧問として迎えられたと報じている。そこにはなんと社民党の保坂展人前衆院議員も。さらに今回新党大地から出馬した八代英太氏の名前なども。原口総務相の本気度がうかがい知れる、なかなかの布陣とは言えまいか。
  もっともその後の報道ではこの顧問団が扱うのは「かんぽの宿」問題等、これまでの西川経営陣の数々のスキャンダルの洗い直し作業を主に受け持つことになるという。民営化見直しの実際の作業はやはり亀井大臣以下、国民新党の長谷川憲正氏などを中心に行われるようだ。ホームページのあの空手の方ね(^_^;)。

その他にもマスコミでは久々に郵政関連の記事が連日踊る。JPEXは日通持ち株分の内20%を日本郵便が買い取るとの報道。いよいよ実質子会社化へと踏み込む。
  また、28日には新経営陣の陣容が発表され日本郵政のホームページ上でもプレスリリースがアップされた。ザ・アールの奥谷禮子氏が解任され、作家の曽野綾子氏が新たに就任。新自由主義から国粋主義へといったところか(^_^;)。
  民営化時、郵政官僚ただ一人の生き残りといわれた現郵便事業会社社長、團宏明氏が代表執行役副社長解任、代わりにというか元郵政事業庁長官の足立盛二郎氏がその役に。西川経営陣との仲良しさんには身を引いてもらい、事業改革の具体的な執行はやはりベテランの元官僚に頼るしかないという現実的判断か。マスコミは時代逆行とキャンペーンを張るが、そもそも最初に強引に時代を逆行させたのが小泉―竹中路線ではなかったか。新自由主義の破綻はもはや誰の目にも明らかだろうに。

私たちにとってもこれからが正念場である。経営者が変わってもどうせ職場のノルマの締め付けは変わらないよなぁ、などとしらけている場合ではないのである。先の基本方針にしても突っ込みどころ満載ではないか。
  民主党主導の政権に過剰な期待は一切持たないが、政権交代によってもたらされた新しい「政治的空間」を私たちの側から精一杯使い倒す気概が問われているのだ。たぶん。

*伝送便11月号初出掲載の文章を若干修正加筆しました。

(多田野 Dave)