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特定商取引法で問われる違法郵便営業     (01.01)

12月1日、改正特定商取引法が施行された。郵便事業会社本社からは施行数日前に各支社に「特定商取引に関する法律改正に伴う営業取組方法」と記された文書が送られ、社員への周知を行うよう指示がなされた。
  しかし、支社ごと、支店ごとその対応がばらばらなのである。
  支社判断で各支店には送付せずもみ消しをはかった支社がある一方、各支店に対し全社員にミーティングで内容を徹底するよう求めた支社。しかし、支社からの指示があったにもかかわらず、文書配布のみで済ませた支店、文書も配布せず周知も行わない支店もあり、対応は支店長裁量というのが実態のようである。

6月に国会で改正案が成立した後、施行まで約半年もの猶予期間があったにもかかわらず、わずか数日前に周知文書を出すという本社のどたばた対応がその背景にある。
  コンプライアンスをお題目のように唱えていても、遵守すべき法律が年々改正されることに対応できない民営会社とは名ばかりの硬直さが露呈したといえる。
  おそらく、郵便会社幹部の頭には自分たちの会社が訪問販売を業としているという意識など皆無だったのではないか。

民営化前は、「特定商取引法」で適用除外だった「国または地方公共団体が行う販売または役務の提供」から自動的にはずされ、今回の法改正では従来対象商品として規定していた「指定商品」(58品目、切手・はがき類は含まれず)もなくなり、「原則すべての商品・役務が規制対象」となったことに気づき、あわてて対策を練るというまさに泥縄商法。
  「声かけ営業」を禁止さらにその「新営業取組方法」の内容も法改正の精神から逸脱した極めて不十分な内容なのだ。

周知文書は、冒頭で特定商取引法は「消費者の保護と取引の公正を確保するための法律です」と述べた後、今回の改正概要について「年賀葉書をはじめとする全ての郵便商品が、特定商取引法対象商品となり、お客様からクーリング・オフ申請が可能な対象商品に変わります」と述べる。
  次に「営業取組(基本動作)フロー」の項では、「営業する際には、郵便商品(申込・購入)確認書を携行し、お客様へ、支店名、社員名を伝え利用勧奨を行います」と述べた後、ポイント・注意点として、訪問販売・電話勧誘販売時には金額に関係なく、郵便商品(申込・購入)確認書を交付する(3千円以上がクーリング・オフの対象となる)と太字で書かれている。
  そして最後に、クーリング・オフ申し出があった際の支店対応フローが書かれているのみである。

今回なぜこのような規定がもうけられたのか、その趣旨についての説明は全くなく、ただ「営業取組フロー」を述べただけで理解しろとはあまりにも乱暴すぎる。

経済産業省の逐条解説では、「訪問販売は、通常の店舗販売等とは異なり、基本的に相手方は望んでいないにもかかわらず不意に勧誘を受けるものである。
  相手方は商品の購入等に全く関心がない、又は忙しくて時間を取られたくない等の理由から、勧誘そのものを受けることを拒否したいことが多い。
  訪問目的等を偽って告げることは、相手方が、そのような勧誘を受けるか拒否するかを判断する最初の重要な機会を奪うものであり、こうしたことを放置することは、消費者利益の保護という観点から問題であるのみならず、ひいては、取引の公正を害し訪問販売の健全な発展を阻害することとなるので、販売業者等と購入者等との問の適正なルールを整備するという観点から本条を規定したものである」と述べている。

従来郵便事業会社で展開していた、いわゆる「声かけ営業」というのは、例えば「書留です」と相手方を訪れ、ドアを開けさせ郵便物を手渡した後に、「ところで年賀はがきはいかがですか」と勧誘するというのがマニュアルとなっている。
  今回の改正では、このような訪問目的を偽って勧誘することを現に戒めているのである。

再訪問も禁止

新「営業取組方法」の文書では、今回の法改正の目玉のひとつである再訪問禁止について全く触れられていない。
  改正法では「販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない」と述べ、「契約を締結しない旨の意思を表示した者に対して、その後引き続きの勧誘と再び勧誘を行うことを禁止」している。
  逐条解説では「同居者の一人が契約を締結しない旨の意思を表示したからといって、他の同居者に対して勧誘を行うことは直ちに違法とはならないが、一度契約を締結しない旨の意思を表示した者の住居を訪問することは、例えば同一人物に対する再勧誘を行うこととなる場合があり得るものであり、そのような場合は違法となる」と述べている。

一度断られても、あきらめず根気よく「声かけ」するような営業は禁止となるのだ。

「過量販売」「次々販売」も禁止

また改正法の第九条では、申込者等は「その日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品若しくは指定権利の売買契約又はその日常生活において通常必要とされる回数、期間若しくは分量を著しく超えて役務の提供を受ける役務提供契約」を撤回することができる(1年以内)としている。
  この要件は、「訪問販売事業者が、その販売する商品等に関し、当該商品等の性質、機能や相手方消費者の世帯構成人数等の個別の事情にかんがみ、個別の消費者にとって社会通念上必要とされる通常量を著しく超えた販売行為等を行う場合を定めたもの」で、例えば独居高齢者に年賀はがきを千枚も2千枚も販売するような行為である。

過量販売の類型として、「一度でも不用意に取引をしてしまうと、次々に契約を押しつけられるようになり、断りづらい状況等から過剰な量の商品等を購入しがちな消費者として狙い打ちの対象とされ、業者が入れ替わり立ち替わり商品や役務の勧誘をしてくる」という「次々販売」についても禁止している。
  年賀はがきの次にエクスパック、次は麺グルメなど強引に勧誘する営業も戒めているのである。

郵便営業方針が根本から問い直される

このように今回の法改正は、従来の郵便営業を根幹から問い直すものである。
  民営化されたとはいえ、郵便局という看板の下で強引な押し売り営業を展開してきた営業方針が今転換する必要に迫られているのだ。
  しかし、本社も、支社も、さらに現場支店の管理者たちはその重大性に何も気づいていないようである。
  あるいは故意に説明せず、違法な営業だと知りながら販売成績だけ上げればいいと考えているのか。
  このようなコンプライアンス違反を繰り返すならば、顧客離れに拍車がかかるだけでなく、経営陣には重大なペナルティが課せられるであろう。

(編集部)