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Headline 2011

真っ当な経営こそ危機脱出の方法    (03.02)
真っ先に非正規リストラありきではいずれ事業は行き詰まるだろう

郵政大リストラに対して、それは経営的に見ても愚作であるとの意見です。
  伝送便編集委でもある天若日子さんの意見を紹介します。

1.郵便事業会社の非正規首切りは経営学の立場で考えても愚策である。
  自動車メーカーであれば、生産ストップ(期間工の削減)は赤字削減に有効な手段である。しかし生産ストップできない郵便事業では、エンジンオイルが切れれば車が止まってしまうように労働力削減偏重は事業運営に障害を与え、労働意欲を削ぎ、労働生産性を一層低下させる。

2.郵便事業会社は無理にでも動かそうと正規社員等をフル稼働(労働強化)しようとするが、郵便事業は労働生産性に限界があり、限界を超えれば、サービスダウンとなる。
  サービスダウンとなれば顧客離れに拍車をかけることになる。また大口顧客への割引見直しもサービスアップがなければ顧客離れを促進させることになる。

首切りを優先した赤字削減策は事業存続自体を危うくさせる。経営者もそうしたことを知らないわけではない。並みの経営者は業務システムの見直しを併行的に行い、サービス拡大による顧客増加策を行いつつ、労働意欲を向上させる作業システム採用によって労働生産性の向上を図る。

3.経営学の立場に立てば、成果主義賃金を一概に否定できない。だが経営学の立場においても成果主義賃金の導入には条件が具備されなければできない。
  条件は様々あるが、一口で言えば、同じ秤で量ることができる仕事に仕事が整理されていることである。
  クロネコなどについて言えば、生産性の上がる仕事のみを採りあげ、個数と時間で「成果」を測る人事考課制度を作り上げた。労働基準法を超えるような労働条件でも高賃金でバランスをとる。とても長期には働けないが・・・。

郵便の場合、多種多様でしかも全国至るところで差し出された一枚一枚の郵便物を過疎・市街地の家一戸一戸に届けるような生産性の上がらない構造を持っている。
  成果主義賃金導入の意図が賃金の引き下げではなく、相対的に賃金増があってもそれを上回る労働生産性の向上を図るためであるとするならば、まず作業―労働システムの見直しが求められ、また労働環境の改善が行われ、作業の標準化が行われねばならない。
  こうした準備なく管理者の恣意的な人事考課で成果主義賃金を導入するならば成功しないことは過去の結果が示している。

4.郵政の経営者のなかには経営改革を断行しようとする者がいない。
  郵政事業庁から郵政公社に移行したとき約1万7500の特定局に支払っている賃料は年約800億円と言われた。特定局長の年収は1千万円を超えると言われた。
  公社総裁に任用された生田正治は郵便局舎の賃貸契約問題など特定局改革に取り組んだが、結果を出せず、次の西川善文になって一転、特定局の活用に転じた。ちょきん・保険の営業拠点として不可欠と判断したということよりも政治力に負けたためである。

今回のゆうパックの失敗は国際物流会社創設の失敗と軌を一にする。
  失敗する起業の五大要素は、1.判断が独善的、恣意的なこと、2.展望なき過大な初期投資と固定費の比率が高いこと、3.速やかな原因調査がなく赤字放置・責任放棄、4.顧客や需要確定をしないままの事業拡大、5.資金パートナーの欠如、と言われている。

郵政に限っていえば起業の失敗は国営企業に胡坐をかいできたためであり、国営を脱するという民営化は権力と資本家による国家財産の私物化を言い換えているにすぎない。

5.一般(管理者群を除いた)労働力が正規・非正規合わせて40万人というのは多い。しかし費用的にみれば正規1に対して非正規2~3であるので、費用換算で捉えると20年前と同じ程度で特に人件費が増加していない。
  郵便内務などの機械化、非正規化は恐ろしく進んだ。それでも経営学的には残る郵便外務の人件費の削減は避けられない。

その場合、人件費の削減の前に、また削減と併行してやるべき課題が数多ある。
  人件費を削減するには、多くの労働力を必要としない体制に変革してからである。これを抜きに実施すれば、血液が止まれば生きものが死ぬように郵便事業も機能しない。

(天若日子)