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Headline 2011

被災地復興と公共サービス (1)   (08.30)
東北大震災復旧・復興の現場を問う8.21市民集会報告
「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」と郵政ユニオン共催により表記の集会が8月21日都内で開催された。
  3.11以降すでに6ヶ月近くになろうとしているにもかかわらず、被災地には未だ大量の瓦礫が野積みされ、復旧・復興の足取りは遅々として進んでいない。私たち郵政事業を含む各公共サービスは現場でどのような苦闘を強いられているのか。今回の集会は様々な現場の具体的な状況を出し合って復旧・復興の状況を一度俯瞰的に総括してみようという試みである。
8.21市民集会  4つの現場から詳細な報告がなされ、すべてを紹介すると膨大な量になる。しかし貴重な記録として今回は時間をかけてもなるべくすべてを紹介していきたいと思う。一度には報告しきれないので一つずつ紹介していきたい。

報告はNTTから電気通信産業労働組合宮城支部の佐藤貞男(本部執行委員)さん、自治体職場から練馬区職員労働組合の横山哲也(中央執行委員)さん、水道の職場から全日本水道労働組合の岡一広(中央本部書記次長)さん、郵政から郵政ユニオンの下見徳章(本部書記)各氏が順番に報告。
  今回は電通労組の佐藤さんからの報告を紹介したい。

NTT職場の佐藤さんからの報告。
佐藤さん  佐藤さんは宮城県仙台市内で電信設備の保守・故障修理の仕事をなさっている。震災当日はちょうどお客さんからの修理依頼で車で移動中に激しい揺れにあった。屋根瓦が落ち電線がショートする様を横目で見ながらお客さんのマンションに着いたが、そこの窓ガラスも目の前で割れたりし、かなり危険を感じた。お客さんとは会えたが修理どころではなかった。一旦職場に戻ろうにも携帯は通じず信号も消え車は大渋滞し、30分で済むところを2時間かかって会社に戻った。津波被害にあったところはこの渋滞中に車ごと流され犠牲になった方が多かったとあとから知った。
  職場に戻り同僚の安否確認をするにも電話が通じない。自分の仕事ながら情けなかった。

被災当時の被害状況

NTT関係、当時の被災地の主な被害状況(3月13日付)については次の通り。
 * 東北3県(岩手、宮城、福島)で385ビルが機能停止。41局所の流出、倒壊。
 * 65000本の電柱が倒壊し6300Kmのケーブルが引きちぎられる。
 * 固定電話サービス150万回線が不通。
 * 携帯電話基地局100局が倒壊、流出、6720局がサービス停止。
 * 東北では5割の通信が不通に。

主要施設の機能停止の原因の多くは電源喪失。本来バックアップ用電源があり1日ほど保ったところもあるのだが、その後燃料確保の困難なども重なり電話の復旧が遅れた。
  私は78年の宮城県沖地震も経験している。そのときはバックアップ用発電設備が機能し電話機能が維持できた。しかし民営化(85年)以降コスト削減等を名目に施設内の発電設備が撤去されてきた経緯がある。

携帯電話の問題。携帯電話の基地局にもバッテリーが備え付けてあるが、これはだいたい3時間ぐらいしか保たない。本来なら各基地局に発電設備が必要なのだろうが携帯電話の場合はコストが合わないのだろう。
  加えて災害時に携帯回線が集中するとNTTの場合は自動的に回線を絞り重要信(警察、消防、自衛隊等)だけが通るようなプログラムを組んでいる。そのため実際は携帯電話はほとんど使えなくなる。NTT内でも管理者の携帯は繋がるが普通の社員は繋がらないという状況になった。管理者が職員の安易を確認しようにも現場の職員の携帯には繋がらないと。
  災害が起こると電話は最初に重要なライフラインとなるものだが、その足下は以上のように非常に心許ない状況になっている。

復旧過程の矛盾

復旧作業は困難を極めた。職場の周りの片付けから始まって私もほとんど不眠不休の状態だった。ようやく3日目あたりから職員間の連絡網ができはじめ被災地状況の視察・確認が始まった。津波被害地の状況は壊滅的で息をのむしかなかった。特設公衆電話の設置や可搬型の移動無線電話の設置等、緊急設備の設置も一部は4月にずれ込んだ。
  私たちのように直接お客さんに対応する修理の仕事も実際は4月になってから開始されたが、1日3千件ほどの修理要請があり、要請件数だけが溜まっていく一方という状況だった。

4月末までに仮復旧ということで、1回線だけでも通信可能であればそこは「孤立」していないと見なし「復旧」と規定した。今回は、全41局のうち5局を除いて復旧とした。5局とは島嶼部の2局と原発緊急避難地域3局。また全壊したビルや交換所などには簡易型の「ボックス交換局」を設置し「復旧」とした。津波被災地は電線網も根こそぎ流され、あらためて山から電線を引き直すなどの急ごしらえの復旧作業が続いた。そのような作業が5月いっぱいぐらいをかけて行われた。

連動して私たちも個別にお客さんから修理要請を受けるのだが、上記のように4月末に会社がマスコミに「復旧」したと発表したものだから、現場は混乱してしまった。1回線でも継がれば「復旧」としたが、場現に向かうと実際は継がっていないという状況が多発した。ほぼ地域の回線が継がるようになったのは7月に入ってからというのが実状だった。その間、被災地の方々には電話が繋がらず本当に厳しい状況ではなかったかと思う。

携帯電話に関しては4月中旬ぐらいまでには復旧していた。各会社の携帯の基地局からアンテナまでの中継はNTTの既存の光ファイバー回線を使っている。その回線自体が切れたのだがNTTは無線設備や衛生を使ったマイクロ波設備を設置して対応した。ただしそれでもやはり1ヶ月は完全復旧にかかっている。今一番使用頻度が高いと思われる携帯電に関してもこれほど時間がかかったというのは課題として残るだろう。私自身現場のお客さんからかなりの苦情をもらった。

今回NTTは被災地以外からの応援として連日1万人規模の動員をし応援態勢を敷いた。その数字はNTTだけではなく通信設備会社などの民間関連会社も入れての数字。
  福島の原発事故に絡み放射能被曝が懸念されるところは管轄のNTT社員だけで復旧作業を行った。ここらあたりは5月9日付の日経ビジネスが詳しくレポートしていた。

(資料として配付されたその記事のコピーを最後に添付資料として紹介してあります)

民営化以降の問題が横たわる

今回の復旧作業を顧みても、NTT自体のリストラ施策の問題もさることながら、やはり民営化以降の問題が大きい。各事業所・職種は数多く民間業務委託されているが、さらにその下に多くの子会社が分立しておりそれぞれがまた業務委託を行っている。あまりにも複雑に細分化された業務形態が様々な場面で弊害を生んでいる。システムとしては東西NTT本社が統括責任となっているが、今回のような緊急時にはこれがまったく機能しなかったというのが現状だ。
  各県ごとに対策室を設置しても具体的な仕事の指示をできる人間がいない。バラバラの事業間の連絡網を繋ぐだけでも大変でいちいち各事業所の指示を仰いで統括的な指令を発するという逆転現象が起きたりしている。2~3日で終わる復旧作業が1週間以上かかったりする。
佐藤さん  民営化によって効率化しコスト削減には寄与したかも知れないが、いざというときには役に立たない。
  今回NTT東日本は震災に絡む業務損失を200億円ほどと試算している。しかし純利益はそれでも500億。収益に関してはまったく問題がなかったことになる。逆に言えばもっと資材を投入できる余地があったのではないかといえる。
  私たち電通労組はこれらの利益をもっと社会に還元すべきであると要求している。

通信サービスは公共サービス

今回の災害により、通信事業という公共サービスを担っているという仕事の重要性を私自身改めてつくづく感じさせられた。
  民営化になる前の電電公社の時代には当たり前のことが現在ではなおざりにされている。
  実は今回も現場の先頭に立ったのは当時のプライドを持ち続けている50代以降の社員が多かったと思うし、今も現場の最先端で苦闘している。ただ、そういう世代もあと10年をするといなくなる。豊富な経験とプライドを持った社員がいなくなるということだ。果たしてまた同様な災害が起こったときに業務が回るのかという懸念を抱いている。

労働組合の課題としては、老朽化した設備の更新やそもそも震災にも耐えうる設備・システムの開発などを通して、利益優先ではなく津波や大震災に耐えうる通信インフラの再構築を訴えることが重要だと思っている。何よりも被災地に対する優先的で迅速即効性を持った復旧システムの再構築を会社に要求していきたいと思っている。

最後に原発関係について一言。
  先の日経の資料には住民の強い要求により復旧作業を急いだとあるが、実際には政府と東京電力からの強い要求によって行われた復旧作業である。現場の社員には連絡がつかないので管理者が直接復旧に向かったのだが、その際やはり相当の被曝をしたという報告もある。その様子は一般社員向けにも宣伝もされていた。
  組合との交渉の中で社員の年間被曝量は20ミリシーベルト以下に抑えるということが会社の方針として明らかになったが、被曝の問題は単に外部被曝線量の過多に止まるものではないということを今問題にしようとしている。また単純に30㎞の円の範囲内に止まらず、いわゆるホットスポットといわれる地域も含めてきちんとした放射線量の管理を会社として行うよう要求していく予定だ。

*資料
  佐藤さんが当日準備したレジュメ (PDF185KB)
  復旧作業時の細かな問題点などが紹介されています。
  日経ビジネス5月9日号記事 (PDF497KB)

(報告 多田野 Dave)

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