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Headline 2011

被災地復興と公共サービス (2)   (08.31)
東北大震災復旧・復興の現場を問う8.21市民集会報告
「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」と郵政ユニオン共催による集会。
  3.11以降すでに6ヶ月近くになろうとしているにもかかわらず、復旧・復興の足取りは遅々として進んでいない。各公共サービスは現場でどのような苦闘を強いられているのか。今回の集会は様々な現場の具体的な状況を出し合って復旧・復興の状況を一度俯瞰的に総括してみようという試みである。
8.21市民集会

報告はNTTから電気通信産業労働組合宮城支部の佐藤貞男(本部執行委員)さん、自治体職場から練馬区職員労働組合の横山哲也(中央執行委員)さん、水道の職場から全日本水道労働組合の岡一広(中央本部書記次長)さん、郵政から郵政ユニオンの下見徳章(本部書記)各氏が順番に報告。

今回は練馬区職労の横山さんからの報告を紹介したい。

練馬区職労、横山哲也さんからの報告。

各自治体の職員は行政派遣という形で私たちの職場からも宮城県の被災地に入りました。全国組織としての自治労自体としては、岩手、宮城、福島と広範な被災地域に4月の後半ぐらいから具体的な復興支援に入りました。
  東京都本部は福島へということで私もとりあえず現地に向かいましたが、着くまではどこに行くのかも分からない。着いたところは南相馬市の新地町という所でそこが支援部隊のベースになっていました。5月7日から15日までの日程です。
  仕事自体は新地町をベースに相馬市と南相馬市を結ぶ浜通りを行ったり来たりという状況でした。

具体的な支援状況

阪神淡路大震災のときにもそうでしたが、自治労には現地自治体の首長からの正式なサポート要請が入り、組合としてもこれに応え具体的な支援活動を行ってきました。その経験もあって今回も早期に支援体制が組まれましたが、なにしろ被災地は広範囲にわたります。
横山哲也さん  今回私が入った新地町では、町長の要請により津波被害によって流された住民の様々な生活物品などを収拾して欲しいとのことでした。住民の気持ちにより添ういい町長だなとの印象を持ちましたが、なにしろ膨大な量の写真とか位牌とか、漁港ですので大漁旗とか、それに子供のランドセル、サッカーボール、優勝カップ等々。流失物の回収作業を延々と行いました。私自身はひたすら写真の水洗いをやっていました。被災され仕事がなくなった漁民の方々とも一緒に同様な作業を行いました。共に横で働いていく内にいろいろなお話しもできるような関係になっていきました。

避難所では県庁職員と地元の職員がそれぞれ交代で24時間運営をしていて、私たちの仲間はそのサポートを行っていました。地元のコミュティーが機能していたところらしく比較的自立的な運営がなされていて、サポート体制もそれほどの混乱はなかったとのこと。逆にこれが東京などの大都会であったらどうだったろうという感想を持ちました。

ただ、やはり細かいところでは、組み合わせによって非常にうまくいくチームと一方では被災者から苦情が出るようなこともあったりします。住民とっては私たちは役人ですから、まぁいろいろあります。避難所によってそれぞれ地域特性があり共通したマニュアルなどはありません。臨機応変に対応していくしかありません。支援する側としてはそれも今後の教訓として持ち帰るしかないでしょう。

現場の「役人」は不眠不休でがんばっていた

私たちは労働組合として現地の労働環境などがすぐに気になるのですが、現地自治体職員は本当に大変な環境下にありました。
  自らも被災している。家族が被災している、または犠牲になっている。同僚が犠牲になっている。家も流されている。しかし現場ではそういう方々がほぼ不眠不休で働いてらっしゃいました。
  労働条件の緩和ということでは私たちがサポートに入ったということで非常に感謝されましたが、長い間過酷な条件の下働かざるを得なかった事を思うと心が痛みますし、今後の課題として残るでしょう。

行政派遣の問題について

行政派遣については新聞等でも報道され注目もされましたが、やはりその支援先の配分は機械的で地域特性も無視した数あわせの動員体制が敷かれたという感じがします。
  現地からの具体的なリクエストに基づいて、それに応えうる具体的な部署の職員を派遣できれば効率的だったはずですが、そうはなりませんでした。
  例えば東京でいえば各区・市ごとに縦割り的に何名出せと。被災地各自治体との間の連絡・調整もないなかでは、実際に今求められているものが把握できないというもどかしさがありました。
横山哲也さん  資料に各自治体ごとの被災状況のデータを紹介しましたが、本来ならそのデータに付け加えたかったことは、それぞれの自治体に今現在職員が何名いて、どのような部署の、どのような技術者が揃っているかといったデータです。それがあるとより現地の状況が把握しやすかったと思いますがなかなかそういうデータが揃いません。

「地方行革」の爪あと

行政改革の問題です。行革は橋本政権以来推進されていますが、小泉「構造改革」時に「集中改革プラン」というものが出されました。地方行革を進めるためのものですが、それは今年の3月までが対象期間とされるプランでした。
  分権改革という美名の元、それぞれの具体的な数値目標を各自治体は自主的に出せと。実際はほぼ強制的に出させて、その目標の達成度はすべて総務省が管理しています。そのデータは総務省のホームページ上からも閲覧可能です。
集中改革プラン  人件費等々の削減目標、民間委託等の目標、指定管理者制度の導入度合い、それらの達成度を地方は毎年度総務省からきつく指導されてきました。
  結果、自治体の労働者は短期間に過激に削減されています。
  私の練馬区役所もそうですが、非常勤、臨時職員、派遣労働者、委託事業者、これらの方々が大量に正規社員と置き換わっています。実際に公の職場、公の機関等々の現場で働いてらっしゃるのはこれらの方々がすごく増えています。
  正規職員がどれだけ減らされたかというデータは自治労も総務省も共に把握していますが、問題は、これら非正規職員がどれだけ増えたかというデータがどこにもないということです。

となると、今災害時、被災地で、実際にどれだけの方がどのような職場でどのような職種に具体的に何名働いてらっしゃるのかということが、把握できないのです。非正規社員の安否情報さえ分からない。
  民間委託されたところは事業の内容をきちんと仕様書によって役所が管理していました。ところがその仕様書には地震が起きたときにはどうするのかといったことまでは書かれていないわけです。そういう想定外の事態に対しては民間委託事業はまったく対応できなくなります。公務員ではありませんから労基法外の働き方を強制することもできません。
  例えば清掃事業などもかなり民間委託されています。委託先が機能しないとたちどころに作業が滞ってしまいます。実際に今回相馬市で見聞きしたことですが、市として持っているゴミ収集車は一台しかないと。せめてもう一台あればと。そのような事例が実は被災地にはいっぱい埋もれているのではないかと思っています。

小泉行政改革以降急激に進められた自治体職員、特に正社員の削減と民間委託という政策が、今被災地でいったいどういう結果を招いたのか。まさに地方行革の爪痕です。
  今後私たち自治労としてもこれら具体的な事例をデータとして揃えることが課題として残されており、さらに非正規労働者の問題についても取り組みを強化しなければならないと思っています。

現状はどうなっているか

震災から5ヶ月以上が過ぎ、あらためて全体を見渡してみると、被災地各県ごとの復旧・復興作業の進み具合にかなり差が出てきているのではという感じがしています。
  たまたま学生時代の先輩が石巻で水産事業を営んでいて、今回事業所がすべて流され、個人的に応援に行ってきたのですが、そこで話を聞きますと、市役所への憎悪というか、悪口をいっぱい聞かされまして。
  そこはいわゆる広域市町村合併が行われたところで、宮城県のなかでも一、二を争う行革先進地いわれたところだと。その結果、自衛隊がいつまでも残るようになったと。つまり自治体機能が麻痺していたと。宮城県は仮設住宅の建設も遅れライフラインも未だ完全には回復していない等、いろいろな問題があり、全般的に他県に比べてやはり遅れが目立つなと思います。
  テレビでは復興美談ばかりが流れていますが、現場は実際はまだまだみなさん苦闘なさっています。行政がろくに機能していないところも少なくないのです。
  また、個人的な感想ですが、犠牲者の死因の多くは水死、さらに圧倒的に高齢者が犠牲になっている。これは地域の特性だからということだけで済ましてしまっていい問題ではないだろうと。この国の地方行政の在り方をもう一度きちんと見直していくべきではないかと思っています。

*資料
  横山さんが準備して頂いたデータ (PDF622KB)
  各自治体ごとの詳細な被災状況が一覧できます。

(報告 多田野 Dave)

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