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Headline 2011

被災地復興と公共サービス (3)   (09.02)
東北大震災復旧・復興の現場を問う8.21市民集会報告
「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」と郵政ユニオン共催による集会。
  3.11以降すでに6ヶ月近くになろうとしているにもかかわらず、復旧・復興の足取りは遅々として進んでいない。各公共サービスは現場でどのような苦闘を強いられているのか。今回の集会は様々な現場の具体的な状況を出し合って復旧・復興の状況を一度俯瞰的に総括してみようという試みである。
8.21市民集会

報告はNTTから電気通信産業労働組合宮城支部の佐藤貞男(本部執行委員)さん、自治体職場から練馬区職員労働組合の横山哲也(中央執行委員)さん、水道の職場から全日本水道労働組合の岡一広(中央本部書記次長)さん、郵政から郵政ユニオンの下見徳章(本部書記)各氏が順番に報告。

今回は全水道の岡さんからの報告を紹介したい。

全水道、岡一広さんからの報告。

私は元々は神戸水道局の採用で、95年の阪神・淡路大震災当時は現場で災害復旧の指揮を執っていました。中越地震のときも現場で指揮を執り、そういう意味では今回は3回目ということになります。労働分野広しといえど水道屋さんで3回も災害復旧現場を経験したのは私ぐらいじゃないかと思います(笑い)。

岡一広さん(今回岡さんはパワーポイントを使った映像を流しながらの説明でした。なるべく状況が分かるように補足して報告したいと思います。)

被災地の状況、特に三陸海岸の様子はどこもすさまじい被害状況でした。神戸の経験と照らし合わせても、もう唖然とするしかありませんでした。

今回のような災害時にはやはりまず最初に水が必要になるということで、水道屋さんはいの一番に駆けつけるのですが、この被災状況ではどこから手をつけいいのか分からないぐらいの状況です。まずは状況の視察・確認から始めなければなりませんでした。
  阪神・淡路大震災のときは縦揺れが大きかったのですが今回の地震の特徴は横揺れも激しかったということです。普通大きな水道管(直径2.4m)は少々の揺れでは壊れないように設計されていますが、今回はかなり大きく損傷しています。東西に揺さぶられてさらに持ち上げられて接合部分がはずれてしまいました。これがはずれたことによって仙台市内はすべて断水してしまいました。

水道魂

3月11日3時20分頃災害発生との報が入り全国の水道屋さんはすぐに動き出しました。一番早かったのは宇部で4時20分には災害対策本部を起ち上げ、5時には給水車のタンクを満タンにして現地に出発しています。
  水道屋さんは日頃からそういう意識を持っています。その日デートがあろうが子供の誕生日であろうが、しばらくは家に帰れないよと言い残して駆けつけてくるのです。
石巻市の被災状況  普段はぼーっとしていても(笑)、いざというときにはなにがあろうとまず駆けつけるというのが、それがみんな普通だと思っています。水、に関わる者達は。それが水道魂というか水道一家などと言われるものなのかなと。被災地の状況がテレビなどで映し出されるたびにこの水道魂がふつふつと沸騰すると(笑)。復旧が終わるとまた「競馬にでも行こか」と、これがまぁ全国的な水道屋さんの特徴かなと思っています(笑)。

元々水がきれいな土地柄

今回被災された東北地方というのは元々どこも水がきれいなところでした。例えば岩手県を走る北上川などはきれいな清流をそのまま使えるということで上流に浄水場を作る必要がなく下流に浄水場を置いていました。ここが津波でやられました。
  その他の地域もなるべく自然のきれいな水を供給したいということで、いちいち山奥に浄水場を置くこともなくふもとに近いところに設置していたのですが、その多くが被災してしまいました。

それぞれの街にはこのような浄水場がありそこから大きな管路が伸びていたのですが、市町村合併によって街が大きくなると何本もの管路を維持するのはコストがかかるとして、一つの大きな街ごとに一本の基幹管路としました。これでバックアップ機能が失われました。一つの基幹管路が潰れると街全体、広域にわたって断水していまいます。
  浄水場の被災と基幹管路の被災という二重の災害によって断水地域が広域にわたってしまいました。

作業現場。実際に復旧作業をなさっている方は民間業者の方です。職員は監督をするだけです。まだ西日本の場合は監督者も実際に作業に携わることができます。ですが業務の委託が進んでしまいますと、現場作業を経験した職員も少なくなり技術も失われてしまいます。
  事務所では机の下に毛布を敷いていつでも寝られる状態にして職員が設計図面をにらんでいます。組合事務室でも書類やらいろいろ散乱したままの状態で職員が24時間交替で仕事をしています。震災から1ヶ月ぐらいの頃だったのですがまだ現場はそんな状態でした。水はまだ出ていませんでした。

国会対策の成果

全水道が推薦した民主党の竹内参議院議員という方がいらっしゃいます。民主党の議員はすべてが悪い人ではありませんよ(笑)、いい方もいっぱいいらっしゃいますが、その竹内議員も被災現場を周り私も状況を説明しました。そして全水道からの要請で被災地の声を届けるということで日本で初めて水道事業について国会参議院の予算委員会で発言しました。
岡一広さん  水道管の繋ぎ目にロックがかかる耐震用の水道管の採用を訴えました。優秀な水道管で地震の揺れでも漏水せず、押しても引いてもはずれることはありません。今回被災地にそれを敷設するための予算が付きました。

災害時には都道府県間と各都市間に災害時応援協定というものが結ばれています。都市というのは政令指定都市と県都ですが、災害時には災害応援事業体というところからそれぞれの事業体が応援に行きます。問題は応援が終わってから。
  災害時応援協定に基づいて、それぞれの事業体は人件費の基本給をのぞき、その他の諸実費はすべて被災自治体に請求できるようになっています。被災した自治体はその請求に基づき予算を計上します。
  阪神・淡路大震災のときは、例えば神戸市などは当時かなり裕福な自治体でしたので財政措置によってこれはすべて支払われました。しかしやはりそれで赤字になり国庫補助金を受け企業債を発行し復興事業に充てました。その企業債の償還が来年か再来年に終わるということですが、ようするに17年かかるということです。かなり裕福な自治体であっても一旦被災するとそれだけ大変な予算上の重荷を負うといういうことです。
今回はどうなるか。
  この話を再度竹内議員にし災害協定の問題点を訴えました。彼は関連各省庁すべてに調整に周り、結果、今回災害応援した自治体は、その経費の請求先はすべて総務省に請求するということに決まりました。総務省は特別交付税によってその支払いに充てます。そのようにシステムが変わりました。

今でもいろんな自治体が各地に応援を出しています。ある被災地ではこのシステムが変わったことを知らずに応援を断ろうかというところも出たと聞きます。このシステム変更の趣旨説明が各自治体にあったのが5月7日。以降はそういうこともなくなったということです。
  そういう点では今回阪神・淡路大震災の経験が少しでも生かされたかなと思っています。さらにまた今回の経験を国はきちんと総括し、次の災害援助システムをより効果的なものにして頂きたいと思っています。

今回の復旧作業の困難さ

今回水道の復旧には2ヶ月半かかりました。災害時にはとにかく街まで水道管を通せば復旧となります。今回は津波によって街そのものが丸ごとなくなってしまいました。ですのでとにかく今現在街のあるところに水が通れば一応それで復旧となります。
  軽微な被災地、または家があって街が残っているところはすべて水を通すことができました。津波にあったところ、また瓦礫処理に水をかけなければならない所などは応急給水施設を敷設し、一応水の復旧はなったことになっています。

ただし、例えばいわき市。ここも合併市です。いわき市の配水管地図を見ると、平地区に浄水場があります。いわき市最大の浄水場です。少し南にハワイアンセンターで有名ないわき地区があります。ここは街も大きく人口も平浄水場多いところなので、このいわき地区にも浄水場があります。
  平地区に近い高台に大きな新興団地があります。しかし平浄水場は新興団地への給水には対応していませんでした。それでここは高台にポンプを置いていわきの浄水場から給水していました。ここが最後まで断水していました。
  いわきの浄水場からここへの管路はたった一本しかありませんでした。先ほども言いましたようにコストの関係です。本来は複数本必要なところです。平浄水場からも管を引けば良かったのです。
  小泉構造改革の影響です。そんなところにお金をかけないでぎりぎりでやりなさい、人も減らしなさい。だから設計する人もいないと。

管の工事を行っている方がおっしゃってましたが、災害復旧にあたろうとしても現場で指示してくれる職員が誰もいない。水道がどこに入っていてどこから手を付けていいか誰も分からない。ですので陸前高田市などは大阪市が入って、浄水場の設計・施工、工事の指示、監督まで一括して請け負ってやっています。
  水道事業も結局いかに職員が大事かということ。地域のことが分かっている専門の職員が大事かということです。
  東北地方というのはおしなべて現場の事業を広範囲に委託に出していたところのようです。監督部署までも委託に出していました。

あるエピソードですが、三陸地方海岸一帯の水道配管図は役所が持っていたのですが、それがすべて津波で流されたそうです。これでは復旧の手のつけようがないと。これが実は皮肉なことに、水道サービスを行っているある民間の会社からこの配管図が見つかったのです。これをコピーしたものを全市に配り対策に充てたというのです。  この会社、その後どこからも仕事が入らないので今困難に陥っていると。
  委託を進めると何かあったときにこういう事態に陥ります。普段少々コストがかかろうが現場の分かる職員をきちんと育てておくということが大事です。事業に関わる資料や図面なども各自治体ごとに管理をしておかなければなりません。
  委託先がなくなったときに誰が責任を持つのかという問題もあります。
  設計・施工・監督・指示という総合的な管理は自治体が責任を持ち、業者さんとともに工事を行うという当たり前の仕組みをもう一度作っていかなければなりません。

全水道スローガン最後に、これは組合のスローガンですが、「水の惑星 命をつなぐ 一滴の水 守ろう放射能汚染から! つくろう水基本法!」ということで当然全水労も原発には反対して、今後も事業の委託・合理化には反対していき、きちっとした行政サービス・公共サービス作っていくよう運動を進めたいと思っています。


(報告 多田野 Dave)

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