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Headline 2011

不当な雇い止め、労働審判で勝訴   (09.06)
秋本忍氏のホームページ「郵便局のヒミツ」より転載

今年3月、荏原支店に4年余り勤務していた配達ゆうメイトのSさんが、当局からの時短要請に応じなかったとして解雇されました。Sさんは東京労働局に相談し、同局は「同じテーブルにつくよう」求めたものの、会社側はそれさえ無視し、Sさんは弁護士に相談し、やむなく労働審判という手段を選択しました。
  この間私もこの動向に注目していましたが、Sさんの解雇後に採用された新しいゆうメイトが6時間雇用となるなど、当局側のほころび・非は誰が見ても明らかでした。
  Sさんは自身が受けた仕打ちにひるむことなく、法的手段に打って出ました。これは、自身の利益やプライドを守るということ以外に、他の労働者の利益や尊厳といったものを失わせたくないという強い意志にも基づいた行為でもありました。以下に示すのは、この間の経緯やSさんの心情をつづった文章であり、Sさん自身がこのH・Pに寄稿してくれたものです(多少の校正・加筆を施してあります)。

『解雇ならびに労働審判経緯』

既に中年の域を過ぎ比較的暇な日々を過ごしていた60歳頃、荏原郵便局で人材を募集していることを知りとりあえず応募してみたのが今から4年余り前。面接を経て採用が決まり、6時間勤務のゆうメイトとして働き始めた。
  業務内容は配達補助ということでその日以来マンション19棟への配達を任され、同じくゆうメイトの女性が組み立てた郵便物の配達業務が始まった。

当初は初めての作業でありひたすら誤配をせぬよう気を配りながら徐々に仕事に馴染み、多少余裕を持ちながら配達できるようになるには3ヶ月ほどを要したと記憶している。
  配達に慣れると同時にマンション数も増え最終的には26棟(1378世帯)を任され、自身の判断で午前中可能な限り多く配達し、午後は比較的余裕を持って配るよう心がけ、こうした勤務形態は今年(2011年)3月の解雇まで続けてきた。

この間配達先から誤配などのクレームはほとんどなく、ミスの少ない配達スタッフだったと自負しているが、今年2月自身が所属する第一集配課のK課長から突然私を含め3名の6時間勤務ゆうメイトに対し「勤務時間を5時間に削減したい」と切り出された。
  時短の理由は郵便事業会社の業績悪化による経費節減のためと説明されたが、私としては、郵便物の減少も確かに一因ではあるが、むしろ昨年実行された日本通運ペリカン便吸収合併(いわゆる「ゆうパック問題」)がその主な原因だと推測している。
  このような企業の誤った運営方針の結果を末端のゆうメイトの時短、すなわち人件費削減から始める無計画な手法を受け入れることは到底できず、勤務時間の短縮には断固反対する立場をとった。

それまで続けてきた通常の配達を5時間で終えることも到底無理であり、「終了しない場合は超過勤務で対応」との回答はあったが、それまで週3回ほどの超過勤務で作業を行ってきたのが現実であり、これも反対の理由である。
  この結果郵便事業会社は「時短に同意できない場合には解雇もあり得る」と通告してきたが、それまでと同様の条件(時間勤務)で業務を続けさせて欲しいと希望したが受け入れられず、3月末で解雇されるに至った。

私自身今年秋には65歳に達し、来年にはゆうメイトとしての勤務を終了することは理解しており、それまでの間従来通りの配達を続けたいと希望してきたものである。
  この理不尽な郵便事業会社の人事方針には断固反対する立場を明確にし、解雇前には東京都労働局に相談し、最終的には彼等の斡旋により同じテーブルで話し合うよう求めたが、郵便事業会社は全く相手にせずこれを無視。やむを得ず労働審判という法廷での審判にこの解雇の不当性の判断を求めた結果、通常3回の審判で結審するにも関わらず2回目の審判で郵便事業会社の非を認め、私への損害賠償を決定し結審した。

時短を通知する場合、「それに伴う職務者の条件変更を同時に知らしめなければならない」と労働法上規定されている。私の場合は週30時間勤務が25時間に短縮、これにより社会保険や雇用保険が適用されなくなるなどの不利益を被ることになる。これらの手続きを経ずただ時短のみを通告したことが、郵便事業会社敗訴の理由として挙げられる。
  法廷では私の申立書に対する郵便事業会社の答弁書やK課長の陳述書が殆ど審理されなかったことも、正当な理由無く不当解雇を行ったことを裏付けている。

また、郵便事業会社がこの労働審判に際し、4人もの弁護士を立ててきたことも驚きである。
  恐らく郵便事業会社が敗訴し不利な判例が残ること、すなわち負けるわけにはいかないという意思の表れと理解しているが、裏を返せば従業員を大切にすることよりも、勝ち負けというメンツを重視していることに他ならない。
  郵便事業会社では過去このような手続きを経ず、一方的にゆうメイトや期間職員に時短を通告し、これに従わない場合は解雇を行使してきたのではないかと推測され、現実にこれに類似するケースを荏原局でも見てきた。

今後、現在従事中の職員やゆうメイトが私のような不遇な目に遭わないよう今回の経緯を文章にしてみたが、郵便事業会社が行っている日本国中どこにでも行き渡った手紙の集配という崇高な業務の一端を担う従業員をもっと大切にしてもらいたいという一念であり、誹謗中傷が目的ではない。

2011年8月記   郵便事業会社荏原郵便局 元従業員・S

かれこれ30年以上この職場に勤めてきた身としては、こんなことは本当に氷山の一角であり、Sさんの他に一体何人が泣かされてきたことでしょう。
  人事交流やゆうパック問題に象徴されるようにやる施策やる施策が失敗や無駄の連続。特にゆうメイトは、都合のいい時だけおだててはこき使い、不要となれば平然と切って捨ててきました。
  Sさんにとっては自身の利益やプライドを守るだけでなく、他の労働者がこのような憂き目に遭わないよう法的手段にまで訴えたわけで、その英断と熱意、正義感といったものには感服させられました。

それに引き替え、Sさんの解雇に至るまでの当局のお粗末な対応・仕事振り、あるいはなり振り構わず勝ちにこだわる無様さ、倫理観の軽薄さもしくは欠如。みっともない代表のようなものでしょう。
  第1回目の審理を終え、Sさんがかなり優勢だとの情報は得ていましたが、最終3回目の審理を待たずして結審したことは、当局側が門前払いを食らったも同然といえるでしょう。それだけ社会や世間からかけ離れた愚行に終始していることに、誰も気づかないのでしょうか。

勤務時間の削減を切り出された(Sさんを含む)3人のゆうメイトのうち、1名は「給料が減り生活できない」として退職してしまいました。また、これに一旦は応じた1名でしたが、それが今では8時間勤務となっており、明暗が分かれたばかりか、へんてこりんな状況となっています。
  いかに先見の目がないか、管理者としての資質に欠けていることを自ら暴露したようなものであり、行き当たりばったりの人事や業務運営なのは明白です。
  ゆうメイトの口からも「我々の労働力を削減しても、社員の超勤が増えたら逆効果じゃないか」などのもっともな意見が出ているのに、こんな単純なことすらわかってないのでしょうか。

それほど経費削減というのであれば、ゆうパック問題にしても最初からきちんとやればよかった。それができないでおいて、切り易い所から切って行く。これなら誰でもできるし、高い手当や給料を受け取る資格など全くありません。
  管理者手当だけで複数のゆうメイトを雇用、活用可能であり、本気なのであれば、そういった無駄で過剰な所から真っ先にカットすべきでしょう。

少なくとも、今回のSさんの勇気ある行動は、労働者の今後・将来に向けて、明るく力強い一歩になったはずです。へこたれず諦めなかったSさんには改めて敬意を表しますし、この経緯・事実を1人でも多くの人に知ってもらいたいと念じるばかりです。

今回この章で紹介したSさんの文章を受け取るついでに、Sさんとはランチを共にし、こぼれ話もあれこれと聞くことができました。
  解雇となる当日、SさんはK1課長とS室長に「裁判所で会おうな」と捨て台詞を吐いたそうです。その時の彼等の顔を、Sさんは今でも忘れないそうです。
  Sさんの屈辱は、案外あっさりと晴れ、私も溜飲を下ろした格好です。おかしなことを繰り返していれば、こうしてしっぺ返しもある。書留や代引を紛失した場合には個人責任を問うと日頃から口にしている彼等のことですから、Sさんに対する損害賠償は、さぞかし自腹を切ったんでしょうね。

都合のいい時だけ「組織」を口にするものの、個を大事にしない組織は、数だけ揃っていても基盤・土台はガタガタです。健全ではない組織で、権力やプライドばかりに固執している。これでは何をやっても旨く行くはずもなく、何が風通しのいい職場でしょう。
  私に対しても、人並みの仕事をしていないと半人前扱いし、大勢の社員やゆうメイトの前で罵った。大したものです。人に厳しく、自分に甘いのにも程がある。きっと、Sさんに対する謝罪の念など微塵もなく、ただただ敗訴したことを悔いているのでしょう。いやはや、さすが一人前のやることは違います。

秋本忍氏のホームページ「東京ヒミツ作文くらぶ」より転載