トップへ
Headline12

3・11から一年―日本郵政は何を検証したか    (03.12)
日々放射能被曝の危険にさらされる郵便外務労働者

日本郵政は震災一周年で慰霊碑を建立

東日本大震災から一年が経とうとしている。死者・行方不明者は1万9千人を超え、いまだ仮設などでの避難生活を強いられている人は32万人以上もいる。
  郵政グループの被害も甚大だった。亡くなった方は61人、建物の被害も、かんぽの宿、郵便事業会社の支店・集配センター、郵便局会社、簡易局合わせて178か所に及び、今も76の局舎・建物が未再開のままだ。それ以外に、建物に被害は無くても警戒区域にあるため停止中の局舎が26もある。

東日本大震災一周忌合同慰霊祭の開催及び慰霊碑建立について日本郵政は震災一周年を迎えるにあたって、犠牲となった社員を慰霊するため仙台市にある郵政東北研修所敷地に慰霊碑を建立、3月2日にはグループとしての慰霊式典を行う。またこの日、全国の職場で一斉に黙とうを行うよう本社指示を出した。
  慰霊碑とは、「霊を慰めるためや、二度とそのようなことがないように戒めるため」に建てられるものという。

直下型大地震がいつ起きてもおかしくない今、二度とこのような犠牲が起こらないよう日本郵政として一刻も早く対策が取られるべきである。
  なぜ、61人もの社員が亡くなったのか、避難がもう少し早ければ助かった命もあったのではないか、という視点から不幸にも殉職された社員の行動の検証を行うことから始めることは社員の命を預かる大企業の使用者としての当然の責務であろう。

しかし、一年も経過したにもかかわらず、現場で働いている社員には、何の対策も聞こえてこない。もう過去の震災として風化させられようとしているのである。
  これでは、いくらりっぱな慰霊碑を建てられても、命をかけて鳴らした犠牲者たちの警鐘に報いることはできないだろう。

コンプライアンスが命取り、津波は「てんでこ」で

今回の大震災・大津波で有名になった言葉に「てんでこ」(てんでんこ)がある。三陸地方では、津波が来そうな地震を感じたら、各自の判断に従いてんでんばらばら「てんでこ」に高台に避難せよと言い伝えられているというのだ。
  防災研究者の片田敏孝群馬大学大学院教授は「てんでこ」についてこう語っている。
 『危険に接したときの人間全般に当てはまる言葉です。僕が話したのは「率先避難者たれ」ということ。他人の命ではなく、自分の命をとにかく最優先で守れ、という意味です。そして、それがそのまま他の人を誘導することにつながる。災害が起こったときには、いわゆる集団同調性バイアスと呼ばれる現象が起こります。つまり、誰もが「逃げなきゃいけない」という意識を持ちながら、「今がそのときだ」とは思えない。人々は不安な気持ちの中で「どうしよう、どうしよう」と戸惑います。そんな矢先に、誰かが飛び出していくと、みんな一斉に逃げることができる。だから「君が自分の命を守ることは、みんなの命を守ることにつながる」と、僕は常々伝えてきました』

郵政職場でも当然あてはまるはずである。しかし現実はコンプライアンスに象徴されるさまざまな壁が立ちはだかり「てんでこ」に逃げることがなかなかできない。
危機管理マニュアル  大津波警報のサイレンが鳴っても、扱っている現金、切手、個人情報、ATMなどをそのままにして避難できなかった郵便局窓口社員、郵便輸送中で郵便車を放置できず避難が遅れた郵便輸送社員など、コンプライアンスに縛られ「てんでこ」できないのが現実だ。
  日本郵政には「緊急時避難マニュアル」という文書があるが、そこには「てんでこ」の思想はない。
  法令遵守が大前提、避難はその後ということになっているとしか思えない。

今も外務労働者の命が削られている

今回の大震災による被害は今も続いている。福島第一原発事故による放射能被害は日々外務作業に従事する郵政労働者の体を蝕み続けているのだ。
  日本郵政は事故直後の3月23日に「福島原子力発電所の避難指示エリア等における日本郵政グループでの業務運営の考え方」という文書を発出し、「原子力安全委員会から避難・屋内退避区域外で雨に濡れても健康に影響を及ぼさないとの見解が示されるなど、安全性が確認されているほか、周辺地域の状況を鑑み、屋内退避要請エリア外の地域においては、本日以降、準備でき次第業務を再開する」とした。
  この文書に参考資料添付された参考資料には郵政独自の見解がつけられていた。
  「文部科学省が3月22日に公表した測定結果では、降雨時も含んだ30キロ圏内以遠の地域の数値が0.5~20.4マイクロシーベルトとなっており、上記見解(山下氏が主張する「人体に取り込まれる放射線量は10分の1以下」)に沿えば、1日7時間、1月(22日)屋外作業に従事しても、最も高い地域で1月当たり約300マイクロシーベルト(20.4×1/10×7×22)であり、胃の×線集団検診の数値(600マイクロシーベルト)を下回っています」という一文。

まさか外務員は屋外作業時だけしか放射能を浴びてないとでもいうのだろうか。通勤時間はもとより、家に居る時、休日の時も放射能は容赦なく降り注ぐ。
  国が示している年間被ばく限度量の計算値の基となるのは一時間あたりのマイクロシーベルトであり、体内に取り込まれる量は10分の1だからといって基本値を10分の1にする計算は聞いたことがない(積算量の計算方法はまちまちであるが)。
  ましてひと月だけの積算値で一回の胃の検診数値と比較するのは論外である。
  ここに今の日本郵政の人命より業務優先という本音が透けて見える。

長時間の屋外作業に従事し、特に放射能値の高い側溝や軒下にあるポスト周辺に立ち止まり、降雨時や降雪時、さらに砂塵の中もほぼ無防備なかっこうでバイクを走行する外務員たちの外部被曝の現実を会社は無視し続けているのだ。

赤バイクが走るモニタリングポストに

実施スキーム本年2月6日、郵便事業会社は「集配用バイクを利用した放射線量のデータ測定」を行うことを明らかにした。
 「自治体からの協力要請に基づき、集配用バイクに放射線量測定機器を搭載し、放射線量データを取得する」というもので、当面、原町支店、日本松支店、三春支店を予定しているという。
  説明を受けたJP労組は「自治体からの要請による社会貢献の一環であること、更に細かい情報の取得は組合員の安心にも繋がることなどから積極的に協力する」とした。
  自治体としては従来の点だけのモニタリングだけでなく面での細かい線量測定ができるということだろうが、実際に測定器を付けて走る外務員にとってはその数値は気になるところ。

事故から一年が経過しようとしている現在も多くの外務員が自らの外部被曝線量に不安を抱きながら日々仕事を続けている中、はたしてその結果がJP労組が言うように「安心に繋がる」とは言い切れないだろう。
  今まで発見されなかったホットスポットが見つかるかもしれない。その時、郵便事業会社はどう対処するのだろうか。

震災から一年、今も将来の健康不安を背負いながら福島の外務員たちは走りつづけている。

(編集部)