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郵政民営化を監視する市民ネットワーク「特別委員会参考人質疑」    (05.28)
【5.18監視ネット市民集会報告】どうなる郵政民営化? (1)

4月27日、郵政民営化改正法案は参議院本会議で可決、成立しました。7年前、連日国会前を騒がした集会やデモもなく、マスコミ各社を賑わした賛否両論の喧噪もなく、静かな法案可決となりました。
郵政民営化を監視する市民ネットワーク「特別委員会参考人質疑」  そもそも今法案は小泉―竹中路線時に成立した民営化法の「改正」にすぎません。民営化路線そのものの抜本的修正はなにもなされてはいません。

何が変わるの?

郵政民営化法改正案が国会で審議されるにあたり、衆参両院ではその特別委員会で参考人質疑が行われました。大学教授や生保、金融業界や過疎地の村長や、労働組合などから参考人が選ばれ、今法案に対する意見聴取や各党議員からの質問がなされました。その様子は衆参のホームページから閲覧することが可能ですが、全部観ようとすると一日がかりになってしまいます。
  これをよりコンパクトに再現し、さらに会場からの様々な質問に答えることで、今郵政改革法の具体的な中身とその問題点などを浮き彫りにしていきたいと思っています。

いったい郵便局は変わるのかそれともあまり変わらないのか。郵便局を利用するもの、働くものにとって何かいいことがあるのか。社会に及ぼす影響は何かあるのか。
  みなさんと共に考えてみたいと思います。

(郵政民営化を監視する市民ネットワーク5.18集会への呼びかけより)

5月18日、東京新宿は角筈地域センターで上記趣旨による集会が開催された。参集は20名とこぢんまりとした会となったが、その分少し専門的な議論も交え広範囲に渡り議論を深めることができたかと思う。
  郵政民営化改正法が通り、ここは一つの節目ということでもあり、詳細にわたる議論についてなるべくすべてを収録しておきたいと思う。膨大な量になるが、今後の討議資料としても残しておきたい。 (多田野 Dave)

 当日「参考人」として各報告をして頂いた方は、各テーマに沿って以下の通り

○ 参考人  
・改革法案から民営化法改正で何がどうなった? 下見徳章 (監視ネット)
・金融業界は民営化法改正をどうみたか 稲垣 豊 (ATTAC Japan首都圏)
・過疎地の公共サービスはどうなる?桧原村から 棣棠 浄 (郵政ユニオン)
・統合郵便事業、とりわけ郵便局問題について 池田 実 (伝送便)
・郵便事業の現場の実態について 土屋純一 (郵政ユニオン)
  議長:日野正美 (電通労組)

会は、会場からの質問を受ける形でそれぞれの参考人が登壇し答える形。
  まずattac-japan首都圏の安藤さんの質問。
  「郵政民営化自体の見直しはしないということで、では傍から見てると具体的に何が変わるのかよく分からない。郵便屋さんが貯金も保険も扱えるということだが」。

監視ネットの下見氏からの答弁。
資料  郵政民営化委員会(法案成立後メンバーが一新された)から最近出された資料の中に分かり易い図表がある。これを見ても分かるように、5分社体制から、郵便事業と窓口の郵便局会社が統合され4社体制に。日本郵政という持ち株会社がこの統合日本郵便の株を100%持つことになり、持ち株会社自体も国が3分の1超を保有するとあるので、この部分については今後も「特殊会社」との位置づけ。
  問題は金融二社。改正前は2017年までに株式完全放出とあったものが、今回その時期が曖昧化に。これをどう見るか。

例えば自民党の片山さつき氏のホームページなどを見ると、今法案の審議にあたっては彼女自身が東奔西走奮闘し、民営化の流れを後戻りさせないよう付帯決議を付けさせたとある。一方「通信文化新報」という全特の機関紙とも揶揄されることもある「業界紙」には「新たな改革へ第一歩」として一定評価している。つまり、民営化推進、改革側双方にとって都合のいい解釈ができるものと言えるだろう。

確かにいわゆるユニバーサルサービス問題については、郵便局にそれが課せられることで自動的に貯保事業のそれも担保されたとするが、金融二社の全株が放出され完全民営化がなったときに、これまで通りすべての郵便局の窓口に業務を委託する義務が残るのかどうかは理論的な保障はない。
下見氏  具体的な各論については今後各参考人から詳細な報告がなされると思うが、私の感想は、依然課題はほぼすべて取り残されたまま、民営化自体の社会的問題・矛盾・弊害は先送りにされただけではないかと。
  郵便事業と窓口会社が統合されることで確かに利便性は高まると思うが、それで巷間言われる郵便屋さんが貯金も保険もすぐに扱えるようになるかというと、そこらあたりは実際に過疎・山間地を配達している現場の棣棠氏に報告してもらいたい。

 正直どうなるか分からない

日本郵便あきるの支店に勤務する棣棠氏。
  郵便屋さんが貯金も保険も扱えるのか、正直言ってよく分からない。確かに民営化以前には総合担務制度というものがあり檜原村でも郵便屋さんが毎日貯保事業も扱っていた。ただしこれは全国的にも過疎地を対象としたもので都市部では行われていない。
棣棠氏  民営化に向かう中で実は檜原村郵便局は窓口だけを残して他の業務はあきる野郵便局に統合されている。民営化後、檜原村住民の強い要望で総合担務制度はなくなっても貯保事業を扱う職員が地域を回ることになっていたが、いつの間にか結局形骸化してしまった。人が足りなかった。ようやく週に1度ほど地域を回っている状況。檜原村住民の当時の危惧が現実となっている。
  今後会社の経営方針がどうなるのか分からないので、冒頭言った通り、どうなるのかさっぱり分からない。現場の状況としては困難だと思うが、そこらあたりは檜原村住民の要望とそれを吸い上げてきたこの監視ネットなどの今後の運動いかんによるのではないか。依然として課題は残されたままである。

 金融ユニバーサルサービスは形骸化?

「がくろう神奈川」という学校事務職員組合員の京極さんからの質問。
京極さん  「郵便屋さんが貯金も保険も扱えるかどうかわからない。でもユニバーサルサービスは義務化されたと。どうもそこらあたりの関係がどうなっているのか、もう少し今回の法の中身の詳しい説明と検証を」。

 attac-japan首都圏の稲垣氏登壇。

金融ユニバーサル問題について。法は、金融二社に直接ユニバーサルサービスを課し稲垣氏ているわけではない。「郵便局にあまねく全国に設置する義務を課す」という文言があるのみ。しかし今改正法では、この郵便局に貯保を含む三事業を行うものとはっきり明記された。それで三事業一体としてのユニバーサルサービスが保障されるのだと。
  一見これは前進とも取れるが、実は全国の郵便局で保険の扱いをしていない郵便局が現在でも3400局あると。いわゆる簡易郵便局といわれる局所のこと。ここにはユニバーサルサービスを提供する義務は課せられていない。簡易郵便局というのはだいたい過疎地にあるもので、そこでユニバーサルサービスの提供が滞るというのは大きな問題。

さらに株式放出問題。先の政権交代によって株式放出は一旦法によって凍結されてきた。改正法の成立によりこの凍結法は解除され、株放出は自由にできるようになった。
  お蔵入り廃案となった「郵政改革法案」(政権交代後の三党合意によって提案されたもの)には、持ち株会社が貯保の株を3分の1超保有、さらにその持ち株会社の株を国が3分の1超保有との案になっていた。3分の1超の株式保有とは、具体的には株主総会において、定款変更、組織再編、事業全部譲渡、監査役解任、新株の有利発行などの特別決議を単独で阻止できるというもの。つまり、仮に会社がもっと民営化させてよとの方針を出しても国は拒否権を発動できるというもの。逆もあり得るが。
  今回その歯止めがなくなった。株主総会でもっと民営化します、郵便局との代理店契約は見直しますと決まっても、国はもう介入できない。

もう一点、復興財源について。
  国は株式放出益を復興財源に充てるとの方針を出しており、それが金融二社の株式放出のことと勘違いされがちである。実は、この復興財源というのは日本郵政、つまり持ち株会社の株のことである。つまり今後金融二社の株がいかに高値で売れようとこれは復興財源には一切結びつかない。震災の混乱のなかでこの金融二社の株式放出益のことがマスコミ等によっても喧伝されたが、結局それはミスリードではなかったか。復興などには一切関わりなく、これで儲けようと思う者が儲けるだけの話しになってしまわないか。

 民間生保業界団体の懸念には根拠があるのか

再度京極さんから質問。
会場  「金融二社の株式完全放出というのは民間の銀行や保険の業界団体からのいわゆる民業圧迫という懸念というか圧力に屈したからだということか。そもそも具体的にはどんな懸念だったのか」「また民営化されたことで新規事業や限度額の緩和なども可能になるのでやはり民間からは強い抵抗があるようだが?」

稲垣氏続けて。
  民営化法改正案が提出された際や法案成立後にコメントを出したのは全国銀行協会、生命保険協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、JAバンク・JFマリンバンク、全国信用金庫協会、信託協会、生保労連など。中身はほとんど同じで以下の3点。
1.早急に金融二社に対する間接的な政府保証(日本政府が株式を1/3以上持っている「日本郵政」による「ゆうちょ」「かんぽ」の株式保有)を解消すること
2.対等な競争条件にないので、業務範囲や預入上限や加入限度額の拡大をしないこと。金融二社の株式1/2以上を売却した後に「認可制」から「届け出制」になっても、政府保証は残るので厳しく判断すること。
3.ユニバーサルサービスの義務および優遇の廃止(すでに民間金融機関で十分保障されている)

ようするに民間金融機関は、ゆうちょの「肥大化」、またかんぽについては政府保障が付いているので「脅威」と主張していた。
  例えば今国会での郵政特別委員会での実際の参考人質疑に立った佐藤全銀協会長は、「2010年にはゆうちょ預残高約175兆円は、個人預貯金の約23%を占め、メガバンク平均残高の約4倍の水準。簡易で確実な少額貯蓄手段を提供するという制度本来の目的を大きく逸脱して肥大化をしている」と述べている。
  同様に筒井生保協会会長は、「生命保険文化センターのアンケートではかんぽ生命に加入しようとする理由の3割が『政府が間接的に株を保有しており安心できる』、4割が『国営の伝統があるから』と回答。かんぽ生命の信用は脅威であり、同等の競争条件ではない。民間生命の新契約の84%が1000万円以下の契約で競合している」と主張。

 公共サービスに「肥大化」という言葉は当てはまらない

しかしそもそも公共サービスに対して「肥大化」「脅威」という尺度は当てはまらないのではないか。これは4月24日の参院総務委員会で山下芳生議員(日本共産党)が述べていたことだが、あくまで利用者の立場に立てば、民山下芳生共産党参議院議員間にとっての「肥大化」や「脅威」は逆に言えば公共事業としての信用や安心に繋がるのではないか。言葉をはき違えてはいけないとの山下議員の指摘は重要だろう。
  さらに私にいわせれば、バブルにまい進しその破綻の危機をゆうちょ、かんぽ資金を含む公的資金によって支えられたメガバンクこそ健全な金融システムにとって、「肥大化」であり「脅威」なのではないかと。
  またメガバンクは、統廃合で店舗数を減らしてきた。富裕層(2万人)向けのビジネス展開(一人一人担当をつけるなど)にも力を入れているなど、公益性とはかけ離れた経営をしている。金持ちは預貯ではなく運用する。預貯金の額だけでみるのは言いがかりに過ぎない。

民営化による新規事業展開と金融限度額について。
  民営化当初はスルガ銀行の住宅ローンの代理業務やクレジットカード発行などかんぽも含めいくつかの新規事業を展開したが、新規事業の可否に意見を出す民営化委員会が、2009年9月の政権交代後の株式凍結法案を理由に新規事業にGOサインを出さない状態が続いてきた。株式保有という政府保証がついたままで、民業圧迫になる恐れのある場合は民営化委員会が何らかの意見を出し、総務省、金融庁が許可しない可能性もあるが、金融2社の株式を1/2を処分したら届出制となる。民間金融機関は民営化委員会の人選、および意見内容に厳しく注文をつけている。
  いっぽう民営郵政はどんどんと展開をしたい構え。業務範囲の拡大(今後の経営計画参照)や預入・加入限度額の引き上げで不要な競争が進む。労働強化や公益性とは関係のない融資や運用にどう歯止めをかけていくのか、労働者と利用者の力が問われているだろう。

 利潤追求を原則とする民営化は公共サービスを破壊する

3月7日、田中直樹が座長を務めていた「郵政民営化委員会」が出した最後の意見書を紹介しておきたい。ここには民営化に対する彼らなりの執念とその矛盾が要約されているだろう。

まず、郵政民営化のそもそもの理念は以下の三点が上げられていた。
 ・ 国民にとっての利便性を最大限に向上させる。
 ・「見えない国民負担」が最小化され、資源を国民経済的な観点に基づき活用する。
 ・公的部門に流れていた資金を民間部門に流し、国民の貯蓄を経済の活性化につなげる。
 (*この三点の論点は当時竹中平蔵が無理矢理こじつけた論点であるとして「郵政崩壊とTPP」という新書に詳しく報告され、厳しく批判されている)

今回の見直しにあたっては、これに沿ってさらに重視すべき事として、
稲垣氏 1.国民利便の向上
 2.事業価値の向上と健全経営の確立
 3.民間秩序への整合的一体化
  の三点を再度提言している。
  問題は彼らが言うこの「国民利便の向上」とは何か。意見書には、郵便局が「他の民間金融機関と同等の商品・サービスを提供することができ、金融代理店契約を通じて国民は郵便局で民間金融機関並みの商品・サービスを受けることも可能な状態となる。この状態が郵政民営化関連法の基本方針で述べられている実現すべき国民の利益の一形態であると認識する」。
  ようするに民間の金融機関で受けられるサービスを郵便局で受けられるのが国民の利便であると。それが民営化の目的であると。
  最終的な彼らの提言としては、「株式を上場することにより、経営の透明性を高め、民営化会社に対して株主の目線からの市場規律を貫徹させることこそが、郵政民営化を最終的に成功に導くものである」と述べる。

しかし、彼らはその議事録の中ではっきりと次のように述べている。
  「そもそも民営化というのは資本主義の原理原則に基づいて利潤を追求して効率的な組織を作る」ということなんだと。「国民利便の向上」が第一の目的ではないのだと。

私たちは利潤追求の組織ではなく公共サービスの確立を訴えてきたわけで、これはそもそも真っ向かっら反する方針であるという事を改めて確認しておくべきだろうと思う。

(文責 多田野 Dave)

続く

*郵政民営化の実態については先に紹介した「郵政崩壊とTPP」に詳しいので是非参考に。また公共サービスの民営化という新自由主義路線がもたらした世界的な惨禍については「ショック・ドクトリン」にこれも詳細が報告されているのでこちらも是非参考に。 多田野 Dave