トップへ
Headline12

福島の郵便外務員の声を聞く会が開かれる    (06.04)
―福島の現実を共有化―

5月26日、東京の文京区民センターで脱原発郵政交流会主催の「福島の郵便外務員の声を聞く会」が開かれた。
5月26日福島の郵便外務員の声を聞く会  この集会は、副題に「雨の日も砂塵の日も放射能を浴びながら郵便を配る・・・」とあるように、原発事故以来、無防備なまま高放射能レベル下で外務作業を続けている福島の郵政労働者の声を聞き、考えていく目的で企画されたもの。

のどかな配達地域が一転

当日、お話しされたのは福島市の日本郵便飯坂支店で郵便外務作業に携わる藤岡郁夫さん。
  配達地域は、農地と住宅地が混在した福島市郊外の「のどかな風景がひろがっていた場所だった」が、今は「汚染地域」に一転してしまった。
  試しに自身の配達地域の一部31世帯の放射線量を測ってみたら、0.4~6.8マイクロシーベルト(平均2.4マイクロシーベルト)もあった。
  計測地点は地上1メートル、つまり郵便受け箱が通常設置されている場所だ。さらに下にある側溝ではもっと線量が高く、藤岡さんら配達員はこのような高線量下で雨の日も風の日も仕事をつづけている。

藤岡郁夫さん仮設住宅に小包を配達しに行くと、その光景にあぜんとする。
  日がな一日ただ天井を見つめて過ごしている人、昼間酒を呑み赤い顔でぶつぶつ文句を言いながら歩く人、ボランティアの人に「もう来るな」と喰ってかかる人などやり場のない怒りが馨積し人間性が歪んでいく。「仮設に行くたびにやりきれない思いにつつまれる」と語る。

しかし、一年たてば感覚もマヒしてしまう。余震慣れ、放射能慣れ、報道慣れ、あふれる情報に慣らされながら、ことの深刻さも薄められていく。
  職場の休憩室で「俺の家の中で測ったら一マイクロシーベルトを超えていたよ」などと話すと「我が家もそうだよ」と返ってきて「それが普通なんだ」と妙に納得したりして流されてしまう雰囲気がある。
  このままでは風化させられてしまうしスピードが速い。「時間はない」と藤岡さんは危機感を持つ。

これまで「福島からの報告」として全国の仲間に訴えてきたが、スタンスを「福島からの発信」に変え仲間に広げることが必要であると今回東京に来た動機を述べた。

JP労組大会に分会意見書

本来ならば労働者の健康と命を守るべき労働組合だが、所属するJP労組は原発問題に対して何一つ見解を示さない現状がある。
JP労組交渉情報  6月開催の全国大会の議案書には「放射能」の「ほ」の字も消えてしまった。「日々放射能を浴びつづける組合員の生命と健康について〈組合員の幸せ〉を希求する〈心ひとつに〉のJP労組はどう応えてくれるのか」と自身が分会長をつとめる福島支部飯坂分会として「大会議案への意見書」を作成した。

JP労組本部の見解として唯一存在するのは昨年3月23日発出の「~本部は専門的見地における公的機関の見解として安全性に対する考え方が示されたことから屋外作業についても業務再開を了承した」というもの。
  後に再開地域(飯館など)で汚染がすすんでいたことが判明しても本部はこの指示について撤回もしていない。

分会としては、「外務員の年間積算線量のガイドラインを新たに設けさせる」一般の健康診断や自治体の健康実態調査のほかにバイク乗車者を対象にした特別健康診断やホールボディーカウンター検査等を検討する」「小さい子供をもつ社員や妊婦及び今後出産を控える社員等の環境整備をはかること」を会社に求めるよう要望、最後に「昨年の事故直後の避難指示の不十分さ、高線量下で屋外作業が強行されたことにより多くの外務員が被曝してしまったことに対して会社に反省と謝罪を求めること」を記した。

藤岡さんは「本部は組合員が日々被曝していることへの自覚がない。今後全国で同様の事故が起こる可能性がある。とにかく本部は見解を示してほしい」と強調した。

質疑討論では参加者からさまざまな質問、意見が出た。
懇親会  神奈川県に住む参加者からの「がれき処理」についての質問には、「個人的見解」として「基本はやはり拡散させない方がいいと思いますが、国はとりあえずと言いながら福島県内に最終処分場を持っていこうとしていることは反対です」ときっぱり。

職場での自覚はうすい現状があるが

外務員の被曝問題に関して参加者から「郵政会社により強制的に被曝させられている。裁判闘争を提起するならぜひ支援したい」という積極的意見も出たが、「残念ながら職場での意識、自覚はうすいというのが現状です」と率直なこたえ。
  しかし、福島の双葉町で長年反原発運動で地域の中心になってきたのは旧全逓の分会だったという歴史をひきつぎ、藤岡さんら福島の労働者は今後さまざまな地域へ積極的に出向き発信しつづけたい、東京の仲間とも交流を深めていきたいと述べ、参加者は温かい拍手でこたえた。

(池田実)