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キーワードで読み解く「新人事制度」    (12.06)
随所に散りばめられたカタカナ用語にご用心

分かっているようでなかなか分からないのが新人事制度。当初構想が提案されたのが郵政省時代の1999年だからもう13年経つ。その後郵政事業庁、郵政公社、そして日本郵政と経営形態が移行し、ようやくと言うべきかここにきて本格導入の話が風雲急を告げてきた。
  要は年功序列の郵政職場を抜本的に変え、能力主義・成果主義の民間体制に切り替えるというのだが、その中身も徐々に変化を遂げてきているうえ膨大な内容で全体像を把握するのも困難。
  すでに人事査定が入ってきていることもあり職場では「外堀は埋められた」感があるのも事実で、本格導入への危機感は薄れているような雰囲気があり、JP労組の来年8月の定期大会(長野)での最終案決定、再来年4月の新制度始動というスケジュールがもはや既定事実として語られるような状況になってきた。

だがちょっと待った、「頑張った者が報われる」「働きがいの向上」など新制度の甘い言葉に乗せられてはいけない。「地獄への道はバラ色で敷き詰められている」――そう、出されている新人事制度の耳触りの良い言葉の奥に潜んだ毒を見抜かなければならない。
  本稿では出されている新人事制度に頻繁に出てくるキーワード(主にカタカナ語)に焦点をあて、独断と偏見で会社の危険な意図を読み解いていく。

〈インセンティブ〉

辞書では、ものごとに取り組む意欲を報酬を期待させて外側から高める働き。意欲刺激。誘因。やりがい。奨励金、報奨金、とある。郵政省時代は、「報償」と言っていたが最近では何かとこの横文字が出てくるようになった。
 「今年の年賀インセンティブトップ賞は折りたたみ自転車」といった具合。良く出されるのがカップ麺、どこかの職場ではバナナというのもあったそうな。まあ「馬の鼻面にニンジン」というのが分かりやすい訳か。だが、今の現物支給「インセンティブ」は現場の受けはいまいち、嘲笑の的になっているのが現実。ニンジンには誰も喰いつかない。
人事評価の査定昇給・賞与への反映  そこで普遍的価値がある金銭で釣ろうというのが新制度の目的だ。

会社は導入目的の一つとして「給与制度をできるだけ簡素化し、社員に分かり易いものとするとともに、各種手当も社員のインセンティブを高める上でより効果的なものに改めていくこと」とこの言葉を使っている。

〈メリハリ〉

言うまでもない、「頑張ったものが報われる、メリハリのある人事制度」と制度案の中に度々出てくる常套句だ。いわば前項で登場したインセンティブが〈メリ〉ならば、〈バリ〉は報われないものを意味する。

かんぽ生命関係では今回の新人事制度で従来あった「販売基準額」を廃止することとしているが、その理由として「営業に対するインセンティブが強く、メリハリの大きい報酬体系を実現するため、基本給部分のウエイトを縮小するとともに、販売基準額の廃止と個人別支給割合の見直しによりインセンティブ(総合評価手当)部分のウエイトを拡大することとしている」と説明している。
かんぽ生命の賃金格差割合  民間生保なみの「メリハリ」のある成績主義を導入して郵政省時代からずっと引き継いできた横並びの「販売基準額制度」を止め、「頑張ったものが報われる」報酬体系にするというのだ。

信賞必罰と略することもできる。では「ハリ」は新制度ではどうなるのか。
  評価制度が全面的に導入されることにより、「頑張ってないもの」は「低評価」という形で必罰される。ちなみに会社が示した「低評価モデル」を見てみると、一般職モデル(2級)の年収比較では、「高評価モデル」の55歳の時の年収は現行と新制度の査定でもほとんど差がなく750万円となっているのに対して、「低評価モデル」では現行年収700万円に対し新制度下では620万円と80万円もの差がついている。つまり〈メリ〉はほとんどないのに〈バリ〉だけがつくのだ。

会社側が強調する新制度導入の目的で「組織の活性化を通じた生産性の向上を目指すものであり、人件費の抑制又は引き下げを意図するものではない」というのがウソであることがこのモデルを見ただけでもわかる。
  〈メリハリ〉といいながら内実は〈ハリハリ〉なのだ。

〈キャリアパス〉

和製英語で、「企業内での昇進・出世を可能とする職務経歴」のことをいう。
  制度の目玉の一つであるコース制での昇進の道のこと。会社は「昇進への早道コース制の導入によりコースごとの期待役割が明示されることから、各社員が将来的にどのような役割・職責を担うことを会社から期待されているキャリアパスか、を理解したうえで日々の業務、研鐙に臨むことができるようになり、明確なキャリアビジョンを持って自らのライフプランを構築していくことが可能となります」とコース制導入目的を述べている。
  各社とも1級から4級のコースが設定(新一般職は1級のみ)され、役職とリンクした等級となっており、その役職で何をするのか、何が期待されているのかは「役割等級定義」として示されている。
  コース転換は原則1回(チャレンジは何回でも可能)と厳しい。

会社が示した「各コースのキャリアパス」のイメージ表を見ると、例えば22歳で入局した場合、勤続5年で2級昇任、14年で3級昇任、19年で4級昇任となっている。その間「地域基幹職」「総合職」へのパスに成功したら勤続30年目前にも郵便局長や支社部長のポストにありつけるとある。

しかしいくらキャリアビジョンを持っても、椅子は限られている。チャレンジは何回でも可、というが一度パスが成功しなかったらその後の出世コースは絶たれたも同然、厳しい淘汰の現実がある。
  局長まで望まなくともある程度のキャリアパスを自分のライフプランとして描いていても役職者数(級別人数)は厳格に決められており、椅子取りゲームに打ち勝たなければならない現実が待っているのだ。

〈小集団マネジメント〉

マネジメントとは「管理」のことだが、小集団という日本語をつけると一般的に「小集団活動」を意味する言葉になる。
  会社は新制度で従来の「調整額」を廃止し、業績手当化するとしているが、この業績手当の中に役職・役割に応じて配分する「班長等手当」を設定するとしている。「班長・役職者に期待される役割に応じた傾斜配分をする仕組みにより、班長・役職者の意欲を掻き立てモチベーションを高める」のが目的という。

さらに「小集団営業マネジメントは、目標達成に向けた自主的活動を実践する集団(稼ぐ集団)を作り出す仕組であり、これにより指示・命令によらない自主的な活動が期待されており、班(チーム)を単位とした小集団活動により、それぞれの地域にあった活動を展開することとしています。チャレンジ加点は、このような期待される業務を遂行するうえで発揮されたチャレンジングな行動や垣根を越えた行動を評価していきたいと考えています」と述べている。

班長は日々、班員の働きぶりをチェックする責任を負わされ、班員は営業はもちろん業務でも班の足手まといにならないようプレッシャーをかけられることになる。

〈ポイント清算〉

ポイントといってもスーパーなどの「ポイント5倍セール」ではない。新制度では日々の業務だけでなく、退職金までこのポイント制が導入される。

郵便外務の場合を見ると実に細かく想定されている。
ポイント管理  例えば、各曜日ごとの基準物数をもとに、この基準物数より多い日でも時間内で配達すれば2ポイント加算される一方、基準物数以内で超勤すればマイナス3ポイントの減点となる。その他、交通事故、三誤(誤配達・誤転送・誤返還)、郵便紛失、個人情報紛失、鍵等物品の紛失、配達希望時間不遵守が減点対象とされる一方、班長裁量で他業務応援が加算ポイントされる。
  営業関係では、ゆうメール等の奪還活動、バイク集荷の実施、レターパック・年賀葉書等販売額のほか、情報収集・営業時間確保・スキルアップ等貢献に対し班長裁量による「班長特別ポイント」というのもある。

各人のポイント清算は毎日行われ、月締で清算ポイントを集計し、獲得ポイント数に応じて班に配分された原資が配分されるという。もちろん「ポイント5倍セール」などない。

〈ファンド〉

一般的には資金あるいは運用資金の意だが、本制度では原資を意味する。
  業績手当は、業務関連手当、営業手当及び郵便業務調整額を原資として制度設計を行っており、「業務分は業務へ、営業分は営業へ」の基本方針に基づき対象となる手当を振り分けている。
  また、固定的給与である郵便業務調整額は、手当化により調整手当・超勤手当等割増賃金・賞与が減少する分もカバーした上でファンドを設定することとしている。
  総ファンドの額は、業績手当(業務)分は要員数に応じて変動、業績手当(営業)分は営業収入に応じて変動するよう設計されている。

各局所へのファンドの配分は、業務ファンドについては重大交通事故の発生(30万円)、記録郵便物の紛失(20万円)、部内者犯罪の発生(10万円)があった局所から控除され、その額は他局所に加算され、営業ファンドでは3割を要員数に応じて配分、残り7割を営業収入に応じて配分する。
  いずれにしても各局所問のファンドぶん取り競争に現場は否応なく巻き込まれていくことになる。

(竹井進)