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集配DOSSの真実    (04.15)
壮大なムリ・ムダ・ムラがまた始まる

いよいよ6月1日から全国の集配の職場でDOSSがスタートする。
  DOSSとは、デリバリー・オペレーション・サポート・システムの略称で「集配業務支援システム」が正式名称。
  その目的は、「配達担当者が携帯端末機により区分機データ等から当日の配達物数を自動取得するとともに、作業項目別の実働時間等を携帯端末機に記録し、区別・個人別に日々の作業量等を蓄積することにより、集配業務におけるムリ・ムダ・ムラの削減する」というもの。
  だが早くも失敗したJPSの二の舞、の声が出始めている。

DOSSの一日 端末機の呪縛

新システムでは携帯端末機がフル稼働する。ではDOSSの一日をみていこう。
  勤務開始8時、担当者はまず当日の担当区の携帯端末機を起動させ、勤務体系、作業種別、区名登録を行う。これからが面倒くさい。いちいち作業メニューを入力しなくてはならないのだ。
  まず、端末機の「作業内容選択」から朝の「体操・ミーティング」を入力、体操後は、「抜出し」「大区分」コ戸別組立」と作業の流れにごとに入力する。それぞれの作業にかかった時間が記録される仕組みだ。
  さらに大区分では従来手書きで行っていた各区の物数記録を、端末機に「小型」「大型薄物」「大型嵩物」別に入力する。
  個別組立作業に入ると、あらかじめ区分口に貼ってある区分口コードをその都度スキャンしてから作業に入らなければならない。推計される当日の各区分口の郵便物数から担当者がその区分口に何分組立時間を要したかがわかるというもの。
  その後は書留授受作業の入力に入るわけだが、これは来年10月予定の次世代システム実施にともなう書留IT化による自動入力とゆうパック自動入力のシステム完成を待たねばならない。当面は速達のみを入力(本格実施の際は特定記録・レターパック等多品種の入力を要す)。

物数を記録した後は出発に移るわけだが、ここでも端末入力が待っている。
  持出区分口登録といって、持ち出す区分口のバーコードをいちいちスキャンしなくてはならないのだ。他区応援の際は持ち出す他区の区分口をスキャンする。これで各人が何通持ち出したかが記録される。
  その後は出発登録、配達(営業時間も入力)、帰局登録、休憩・休息登録とすすむ。午後も同様の入力の繰り返し、こうしてDOSSに縛られた一日が終了する。

と、思ったら大間違い。これからがシステムの本領発揮、「見える化」の集計・分析機能の出番だ。

組立一通何秒、各人の能力を順位付け

まず1.業務速報。これは当日の朝(9時半頃)にその日の各課・班・区ごとの要配物数を速報値(推計)で印字し、これに基づき班長等が担当者に業務応援等の指示を出すというもの。

2.通配業務実績一覧
  各人のその日の業務内訳を時間帯別に一覧表(ガントチャート)にしたもの。現在車両の運行記録表で走行距離と時間が一覧表で出されているがそこに大区分・戸別組立等の時間が出されるほか、組立、持出登録した区分口の番号も表示し、他区応援の際にもその応援状況が分かるようになる。

作業内容の内訳を円グラフ化3.作業時間割合
  円グラフで課別・班別・個人別に表示された時間表。
  「他課・他班と比較することで作業改善や生産性の向上に向けた気づきとして活用」としている。

4.配達物数と出発・帰局時刻
  棒グラフで配達物数、折れ線グラフで出発・帰局を表示し、各人の作業実態を一目瞭然に表示しようというもの。
配達物数と出発・帰局時刻の相関関係

5.局外作業時間と走行距離
  縦軸に作業時間、横軸に走行距離を表示、走行距離に対して局外時間が長い人、走行距離に対して局外時間大区分・戸別組立の作業能率が短い人がわかるという。

6.大区分・戸別組立の作業能率
  各人(正規・非正規別)の大区分、戸別組立作業で一通あたり何秒を要したかを表示する。秒数とともに順位までも表示される。

こうして各人の作業能率は棒グラフ・円グラフ・折れ線グラフ等を駆使して「見える化」される。
  これにより集配業務における「ムダ・ムリ・ムラ」を削減するというのだが、このフレーズはどこかで聞いたことがある。
  そう何億円もかけて全国展開したJPSのキャッチフレーズだ。

今回のDOSS施策はかつてのJPSの再演、いやそれを数倍上回る壮大な「ムダ・ムリ・ムラ」施策になろうことは一目瞭然である。
  毎日、担当者は携帯端末機にその一挙手一投足を縛られたあげく、配布される各種グラフで能率が丸裸にされる。
  一体このデータでどれだけ効率化がはかれるというのだろうか、入力にかける労力、煩雑さ、出力の手間、配布される膨大なグラフ類の紙、それだけ見てもムダではないかと直感する。

投資額は1千億円超?! 郵政システムにむらがるIT企業

ムダは紙、労力だけにとどまらない。このDOSSは日本郵政が手掛ける次世代郵便システムの通配業務部門における新システムである。すでに部分的に施行されている書留授受のIT化や車両運行記録システムと併せ、会社は来年10月にはゆうパックの授受システムを含め本格始動する青写真を描いている。
  紆余曲折したペリカン便とゆうパック系の二系統併存システムがいよいよ一本化されることになるのだ。

このシステム開発にはすでに驚くべき巨費が投じられている。
  日本郵便は5年前から「次世代郵便情報システム」に着手、新システムは共通基盤の上に各種アプリケーションを積み上げていく方式を採用した。
  共通基盤に関し初期構築など最初の入札が行われたのは2008年夏で3社が契約した(契約額は計16億円余)。少額に思えるが「小さく産んで大きく育てる」のがIT企業の真髄、その後「追加構築」などの名目で、入札を経ない随意契約が次々と結ばれていく。
  例えば、伊藤忠テクノソリューションズ(株)は、「次世代郵便情報システムの先行開発における共通基盤の追加構築の委託一式」を253億円余で随意契約している。その他、日本IBM、日本電気、アクセンチュア、富士通など名だたるIT企業が随意契約を繰り返し、その総額はすでに500億円に迫る。
  金額だけでなく、開発期間もすでに5年を要し、目標の来年10月予定の本格実施まで6年もかかっている。
  いくらJPEX破綻というアクシデントがあったとはいえ、システム完成に6年の歳月を要していては、ドッグイヤーのIT界においてはすでに劣化していると言われてもしかたあるまい。膨大な金と時間のムダと言えないか。

はたして巨大システムを実施して、その費用対効果はいかばかりか。来年度からの導入が目論まれている「新人事・給与制度」での各人の査定やポイント制の基礎データに使用するとしても「元がとれる」とはとても思えない。
それ以上に、来年10月本格実施となれば、ゆうパックから書留からあらゆる品種、料金、通数までが詰め込まれた携帯端末機に振り回される外務員の精神的・肉体的負担は計り知れないだろう。
  それでも動き出したら止められない。関連企業の言うがままにシステム構築は進む。

IT企業の草刈り場

郵政グループ全体でも、同様のシステム刷新が大規模に行われている。
  ゆうちょ銀行の第5次システムではNTTデータが約1,000億円で勘定系システム構築を手がけたほか、新規の住宅ローン等で使用する融資システムも231億円で完成させている(認可が下りず休眠状態)。
  一方、かんぽ生命では頻発する保険金支払い漏れを受け、新契約管理システムの改修に着手、「要件定義工程」をニッセイ情報テクノロジーが71億円で受諾している。
  持ち株会社の日本郵政でもグループ各社の拠点とシステムを接続する「郵政総合情報通信ネットワークシステム」を来年1月から段階的に刷新する(第5次PNET、アクセンチュアが工程管理を担当)。

一連のシステム刷新について会社側は従来の重複システムの集約とハードウェアの削減で年間3,000億円かかっていた(!)。
  IT関連費用を3分の2に削減するとしているが、それ以上に新規システム構築に巨費を投じているのは明らかである。
  「世界最大規模」と言われるゆうちょシステムはじめ全国に張り巡らされた巨大郵政システムはもはやIT企業の草刈り場と化しているのだ。

DOSSシステムが開始される集配職場でも、「次世代」の次は第二次、第三次と投資が繰り返されるのか。
  その犠牲となるのは常に現場である。

(池田実)