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新人事・給与制度をぶっつぶせ     (05.09)

3月25日、「労働力政策」に関する第二次要求書に対する会社の回答が示された。
  「新人事制度」の導入が妥結するかどうかはまだこれからの話なのに、要求を出したJP労組も、それに答える会働き方のイメージ社も、同制度のスタートを既定のこととしてのやりとりである。
  しかし、図示されている社員区分別「働き方のイメージ」や「期待役割」を見ても、「新人事制度」がもし導入されたら「地域基幹職」ということになる私(58歳、主任)と「新一般職」との違いはいかほどのものか。これで年収にして数百万円の差がつけられるのはどう考えても不当である。ならばお前の賃金を下げてやろうかと会社は言いたいのだろうけれども、それがただちにはできないから「新一般職」新設。つまり将来世代の極端な賃下げがその狙いだ。

 メリハリ緩和をどう見るか

その一ヶ月ちょっと前、2月14~15日に開催されたJP労組第11回中央委員会の模様については本誌3月号に山下達夫さんが詳しい報告記事を寄せている。この間の交渉を通じての一定の「メリハリ緩和」によって、「新人事制度」は全国大会で妥結承認の方向へとの流れが強まったという。
  去年11月に出された第4次回答において、それまでのD評価(定期昇給1号俸減)が相対選考で10%相当であったのが絶対選考に変わって、一定以上の点数をクリアすればC評価(増減なし)にとどまれることになったのが大きい。去年の成績ではD評価相当の人数は5%前後との由。半減するわけである。
  私などは、会社は「相対選考」を譲らないとみて、JP労組をして「絶対選考」を譲らせないよう突き上げることで簡単には妥結承認させない方向を展望したかったのだけれども、やや甘かったか。

あるべき姿そして会社は「労働力政策」における「あるべき姿」として郵便事業部では正規雇用9万4千人のうち「新一般職」を4万4千人と算出している。一見すると新人事制度の成果主義的側面が弱まって、替わって「新一般職」が全面に出てきたようにも見える。
  しかし、新たな格差を生む「新一般職」導入はそれ自体が労働者を激しい競争へとたたきこむだろう。
  時給制から月給制へ、月給制から「新一般職」へ、さらに「新一般職」から「地域基幹職」への転換をめぐって、それぞれの段階で仲間同士がこれまで以上に激しい競争を強いられることになる。その競争促進効果は会社の若干の譲歩としての「メリハリ緩和」を補ってあまりあるのではないか。

さて「労働力政策」第二次要求で労組側は、労働法制の改正(これは労働契約法が4月から「改正」され、これ以降有期雇用が5年を超えれば申し出により無期雇用に転換することを指す)に伴って無期契約となった時給制契約社員は月給制社員に、月給制社員は(新人事制度が通れば)「新一般職」へ原則転換させよと要求していた。
  会社の回答は、月給制社員は「制度のあり方について検討する」とした上で、登用選考については「現行方法に準じる方向で」。

グループ全体で約1万人いる月給制契約社員はちょっと珍しい雇用形態だ。有期雇用なら普通は時給制である。最低賃金制も時給で現わされるからそれを下回っていないか量るにも時給制のほうが便利。こういう他ではあまり見られない雇用形態を作ることで、この人たちに正規雇用に近い責任と負担を求めながら待遇は低いまま、登用も狭き門の前に置いてきた。
  「新一般職」が正規化へのシェアリングだというのなら、せめて月給制社員の希望者全員転換くらいは必須でなければならないのに、会社はなお査定を通じた選別を手放すつもりはないらしい。
  競争を強いられるだけでなく、たとえスジが通っていても会社に睨まれるような言動もとりづらい。選考者=使用者の前で無権利状態だ。
  “上昇”への期待を持たせながら格差を増やしていくことの罪深さがここにある。そのことに無感覚に「新人事制度」を呑んでいいのか。

 産業競争力会議

時期でいえばJP労組の第11回中央委と「労働力政策」第二次回答の間ということになる。3月15日、「産業競争力会議」というものの4回目の会合が永田町で開かれ、挨拶に立った安倍晋三総理大臣がその中でこんなことを述べている。
  「多様な働き方を実現するため、正社員と非正規社員への二極化を解消し、勤務地や職種等を限定した、多様な正社員のモデルを確立したいと思います」
  郵政における「新一般職」のことをご存じなんですか、とつい思ってしまうが、これはもちろん順序が逆。安倍総理が口にしたのはこのあいだからの財界の意向であって、日本郵政もその意向に沿ってことを進めようとしているのである。

この「産業競争力会議」とは何か。
  同会議のHPによれば「日本経済再生本部の下、我が国産業の競争力強化や国際展開に向けた成長戦略の具現化と推進について調査審議するため」に開催される。議長は内閣総理大臣。1月23日に第1回が開催されてから3月いっぱいまでにすでに5回の会合が行われている。

第4回産業競争力会議配布資料から

材力強化・雇用制度改革について

3. 雇用制度改革 【具体策】(抜粋)

(2)労働市場の流動性を高め、失業を経由しない成長産業への人材移動を円滑にすると同時に、セーフティネットを作る
・ 解雇ルールの合理化・明確化(再就職支援金の支払いとセットでの解雇などを含め、合理的な解雇ルールを明文で規定)
・ 雇用調整制度の抜本改革(「雇用維持」から、転職向けの教育訓練や転職先への助成など、「成長産業への円滑な人材移動」のための雇用調整制度に切り替え)
・ 生活保護受給者の就労インセンティブを高めるため、就労収入の一部積立制度を導入
・ 年俸制雇用の拡大によるセクター間での人材流動化の促進
・ 雇用流動化に向け、民間が自ら人材の流動化阻害要因をなくしていくべく制度改正を進める(例:企業内年金支払いのための退職年齢の引下げ等)

  その第4回会合では、安倍総理の前記挨拶に応えるように、長谷川閑史という人(武田薬品工業株式会社代表取締役社長)が「雇用制度改革」をテーマに報告を行った。労働力を企業にとっていかに使いやすくするか知恵を巡らしているわけである。
安倍総理が2月28日に国会で行った施政方針演説に述べた「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します」という、その流れの中で新しい正社員というものも打ち出しているのだ。

私たちの「正社員化要求」とは全く違うところから出てきた、この「新たな正社員」をどう考えたらいいのだろうか。
  本連載の3回目に日経連が1995年に発表した「新時代の『日本的経営』」について触れた。すなわち
1.長期蓄積能力活用型(無期雇用)
2.高度専門能力活用型(有期雇用)
3.雇用柔軟型(有期雇用)
  という労働力の三区分である。以来この財界の戦略文書に沿って有期雇用(非正規雇用)が野放図に拡大して今日に至るのだが、産業競争力会議がいま出してきたのは、その財界基本路線の深化および手直し。
  まず深化というのは、非正規雇用を増やすことで人件費総体を下げ労働力の使い捨てもできるようになったけれど、それだけでは足りずこれからは正規雇用も使い捨てできるようにしてしまえ、ということ。

「現行規制の下で企業は、雇用調整に関して『数量調整』よりも『価格調整』(賃金の抑制・低下と非正規雇用の活用)に頼らざるを得なかった」と長谷川報告は不平を鳴らす。正社員をもっと解雇しやすくしなければ。

しかし、日本では正社員は解雇しづらいとはよく言われるけれどもそれは本当だろうか。
  日本航空で165人もが解雇されたのはついこのあいだのことである(2010年12月)。あるいは「あいつは要らない」と会社から目をつけられた社員は希望退職に応じざるを得ないのが多くの企業での実態(「追い出し部屋」!)。これは事実上の「解雇の金銭解決」ということにならないか。
  いっぽう「解雇がしやすい国」と言われるアメリカでは、なるほどレイオフ(一時解雇)はあるけれどもそのさい企業による選別はないし(単純に勤続年数の浅い順だそうだ)、レイオフの理由であるところの企業業績が回復すれば復職できる。

つぎに手直しというのは、「新時代の『日本的経営』」路線が、みるべき抵抗も受けずすんなり通ってきたため、やり過ぎによる歪みが覆い隠せなくなったからである。
  将来が不安で家庭を持つこともままならぬワーキングプアの急増は社会の持続可能性を危うくする。今となっては懐かしい名となった亀井静香氏がつい3年前「希望者全員の正社員化」を打ち出したのは、このままでは世の中の底が抜けてしまうという保守主義者なりの危機感からであったろう。

財界路線に対する抵抗が路線を修正させたというより、財界路線があまりにスムーズに進みすぎたがための僅かな手直しなのだ。だから「改正」労働契約法による有期契約5年で無期契約への転換は、その5年が満ちる前に雇止めされるおそれを排除しきれていないし、賃金など労働条件までは(無期になっても)なかなか変えようとしない。「正社員化」にしてもとことん企業に安く都合よく買い叩かれてのそれになっている。

郵政における「新一般職」について言えば、その前に正社員化を求める私たちの闘いがもっとなくてはならなかった。忸怩たる思いを込めて「格差なしの正社員化」の声を上げ続けたい。

(土田宏樹)

*伝送便5月号より転載