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新一般職を考える    (07.10)
「新一般職」はコスト削減の切り札―賃金の引き上げこそが今後の課題

JP労組は今年の夏の大会で新人事・給与制度の受け入れを決めようとしています。職場ではその議論が進んでいると思いますが、「新一般職」に対する議論はあまりされてないような気がします。
朝日新聞記事  折しも、規制改革会議等で「限定正社員」等ということが検討されており、郵政の「新一般職」もこれと絡めて新聞などで報道され、注目されています。この点も踏まえて、郵政が導入しようとしている「新一般職」について考えていきたいと思います。

「限定正社員」は非正規の一形態

規制改革会議で検討されている「限定正社員」とは「職務、勤務地、労働時間が特定されている正社員」であって、職務や勤務地がなくなればそのことを理由に解雇が可能となる正社員です。
  職場や従事していた業務が廃止された場合、それを理由に解雇ができるような「正社員」です。従事している業務や職場がある間だけ雇用するというもので、有期雇用の一形態に過ぎません。もちろん、処遇も従来の正社員から見れば大きく下げることが想定されています。名ばかり正社員です。
  しかし、郵政が入れようとしている「新一般職」はこれとは少し違います。職務や勤務地は限定されていますが、働いている職場(郵便局)や業務がなくなればそれを理由に解雇されるものではありません。その意味では終身雇用=正社員の一形態と言うことができます。

「新一般職」、問題は処遇が妥当か

「新一般職」は出世を目指さず今の職場で働き続けたい、転居を伴うような転勤はできないというようなごく普通の労働者の希望に沿ったものとも言えます。だからこそ、「地域社員」「エリアスタッフ」等と様々な呼ばれ方がされていますが、多くの企業で既に導入されています。勤務地は限定(その意味では職務が限定されているとも言える)されていますが、雇用期間の定めのない正社員です。
  しかし、問題は処遇が勤務地が限定されていたり、将来管理者になることを想定していないだけで、「地域基幹職」の約6~7割、年収で最高470万円という賃金が妥当かです。
  「地域基幹職」は将来管理者になることを想定されており、支社内の転居を伴う配転が義務づけられています。
しかし、この点を除けば、管理者になるまでは、「新一般職」と同じ仕事に従事し、仕事に対する責任も同じです。
  管理者になった時点で、あるいは転居を伴う配転が行われた時点でそれに対して、例えば管理職手当や転居手当、単身赴任手当等として支払えば良い(現在でもそれはある)わけで基本賃金に格差をつける合理的な理由はありません。「同一賃金・同一労働」からすれば当然のことです。

人並みの生活ができる賃金か

会社は、全年代を通じて「新一般職」の賃金カーブが人事院の標準生計費を上回っていることを理由に賃金は妥当だとしています。
  しかし、この人事院の標準生計費は実際の生計費を正しく反映しておらず問題です。
表1  人事院の「世帯別標準生計費」は総務省が毎月行っている「家計調査」を基にして算出されていますがその金額とは大きく異なっています。人事院の「世帯別標準生計費」では、消費支出金額は3人世帯では約20万円ですが、総務省の「家計調査」の勤労者世帯の消費支出は約34万円です(表1)。
  人事院の「標準生計費」は、ある生活モデルを想定して算出された理論生計費です。他方、総務省の「家計調査」は、家計の支出状況を毎月直接に調査して出しています。「家計調査」の方がはるかに生活実態(生計費)を正しく反映していることは明らかです。

表22011年の家計調査では勤労者世帯の月平均消費支出は全世帯平均(2.8人)で約28万円となっています(表2)。
  勤労者世帯の場合はこの中には税金や社会保険が入っていないのでそれを加えた実支出は約36万円です。
  生活実態を正しく反映していない人事院の「世帯別標準生計費」を根拠に「全年代生計費を上回る水準」という郵政の説明はごまかしです。
  前記の家計調査では年間支出は約430万になります。しかし、住宅ローン等の返済金は実支出に入らないので実際の支出はさらに大きくなります。
  また、同じ家計調査での勤労者の世帯平均(4.3人)の世帯主の給与収入は年間で約490万円です。新一般職のモデル年収は44歳子供一人で430万円、生涯賃金の最高額は460万円(54歳)となっており、勤労者世帯の平均収入を大きく下回っています。

「新一般職」は今の正社員の問題

現在の正社員は自分で希望しない限りは「地域基幹職」に移行することになり、給与等の処遇は変わりません。しかし、問題は「地域基幹職」は支社内での配転が義務づけられていることです。

今の正社員の多くは最後まで今の職場働きたい、少なくとも転居をしないで働きたいと思っている人が殆どだと思います。転居しないで働き続けることができるからこそ郵便局の仕事を選んだ人も多く、いわば既得権です。しかし、それが守られる保障は全くありません。これまでの交渉(JP労組でも、郵政産業ユニオン)でもこうした歯止めは全くできていません。
  「地域基幹職」に移行して直ぐに転居を伴う配転が大々的に行われるということは考えにくいかもわかりません。しかし、会社がやろうとすればできるということは決定的です。
  転居を伴う配転をちらつかせれば多くの人が「新一般職」に自ら希望して移るならば、人件費削減の手段として使われてくることは多いに想定できます。
  実際に仕事を回している正社員の八割が「新一般職」という会社の示している労働力構成の「あるべき姿」から見てそうなって行くことは間違いありません。
  かつて、NTT労働者が、全国配転を武器に賃金の二五%カットを飲んで、通勤エリア外への配転のない地域会社(県内)への移籍を余儀なくされたことを忘れてはならないと思います。

「新一般職」の処遇の引き上げを

あるべき姿会社の説明では、「新一般職」は期間雇用社員からの正社員登用と新規採用を当てるとしています。配達など実際に業務を担う人の8割は「新一般職」なので新規採用者の殆どは、「新一般職」として採用されることになります。「地域基幹職」は管理者予備軍だからです。
  会社が示している労働力構成の「あるべき姿」を見ても65%が「新一般職」と期間雇用社員です。
  「新一般職」の導入が賃金水準の低下につながることは間違いありません。会社に取って「新一般職」はコスト削減の切り札です。
  将来の職場と働く仲間の賃金水準を守るためにも「新一般職」の賃金の引き上げを目指すべきです。そして、そのことが「地域基幹職」に移行する今の正社員の将来の賃金を守ることにつながります。

(椿 茂雄)

(伝送便No.412 2013年7月号より転載)