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ルポ、福山セク・パワハラ損害賠償請求裁判    (02.12)
郵政産業ユニオン呉支部機関紙2月4日号より転載

福山セク・パワハラ損害賠償請求裁判

その4

ルポ占部裁判

2011年6月13日、原告は配達途中で交通事故を起こす。L字型交差点での自動車との典型的な出会い頭事故だった。

原告からの報告により、本裁判被告の一人である濱本第1集配課長(当時)が現場にやってきた。まだ事故の相手がいる前で原告に対して「これは出会い頭の事故じゃない。これが避けられないなんて、あんたバイクに乗る資格はないわ」と言い放った。
  裁判に入って被告濱本は、事故現場に行ったことや帰局後原告に、事故に対する処分等の説明はしたが、現場でこの様な発言をしたことについては否定し、パワハラの事実はないと主張している。
  水掛論争に持ち込みウヤムヤにしようとの魂胆なのだが、集配課に働く人は「言いかねんな」と直感するであろう。というのは、交通事故に対する会社の姿勢は異常としか言いようがないからだ。

バイクにしても四輪にしても業務で乗車するのだから、会社には交通安全についても責任はある。適正な業務量、適切な作業指示、車両の整備等によって交通事故を防ぐ責任がある。
  ところが最近の会社は、こうした点は全く考慮せず、事故原因を、専ら社員の「意識」に求め、責任追及に躍起になる。ひとたび事故を起こせば、まるで凶悪な犯罪でも起こしたかの如くの扱いをする。

敵は誰か?

まず、3日間の乗車停止とトレーニングセンター送り。これが運転技術とどう関係するかは全くの不明。要は見せしめ・懲罰に過ぎない。
  福山局では、更に事故事例として事故の概要が掲示板に張り出される。本人の名前も記載してあるから、さらし者である。
  これだけではない、ーケ月に渡って「安全立哨」に立たされる。門前に立って出発する社員に対して「行ってらっしゃい。気を付けて」と声を掛けさせる。
  こうした施策の根底にあるのは、さらし者にする事によって、精神的に打撃を加える点にある。会社用語で言えば「安全に対する意識付け」を行う、との事になる。

これで物足りないのか、更に「事故事例研究会」を行う。これは、班員を集めて、本人に事故の概要を説明させると共に、同僚に安全対策等の意見を求める、というもの。
  会社は「責任追及の場ではない」と言うが、非難の視線を感ずる事なく済むはずがない。
  福山局では更に、原告及び同じ班の社員に対して「交通安全」の腕章を着用して配達作業をする様に命じた。腕章はビニール製で、暑い時期だったので蒸れて仕方ない。「お前が事故を起こしたせいで、みんなが迷惑する」との雰囲気を作りたかったのだろう。

一緒に働いている者同士を対立させ、事故を起こした職員に批判・非難が集中する様に差し向ける施策は、イジメの構造そのものである。
  加えて福山局は「腕章の着用は社員が自発的に行なった」とうそぶいた。更に追い打ちの如く処分が加わる。会社の損害が10万円までが訓戒、以上が「戒告以上の懲戒処分」と決まっているそうだ。
  期間社員の場合は、これにスキル認定が加わる。基礎評価(10項全部○で時給10円プラス)が△評価とされ、時給は10円ダウンする。半年間で1万円程度の減給となる。

指示ではなく暴言

会社のこうしたイジメ施策の横行の中で事故は起こった。
  原告の占部さんは表現力の豊かな人で、彼女の言葉では濱本被告は「誰に対しても平等に情がない」人だという。
  一部の社員に情がないのと全員に平等に情がないのと、どちらが良いかは別にして、社員に厳しい人間だったのは間違いない。
  作業指示は常に「定時終了」。雨が降ろうが、郵便が多かろうが、お構いなし。
  原告が事故をした日も、書留が多かったにも拘わらず、何の対策も講ぜずに、定時終了を指示しただけ。挙げ句の果てに、事故現場でのこの暴言。
  3日間の常務停止の期間に、原告に営業を命じて、「お中元ゆうパック」を売ってくると、「暑中見舞いハガキ」が売れていない事に難癖をつける有様。

被害者は社員

現場での暴言について、中国支社の人権担当の調査では次の様になっている。
  「1集課長にも聞いたんです。似たような事を発言したことを自分でも認めました。事故をおこしたのは大変なことであっても、そこで言う言葉ではない。」となっている。
  この点について、被告濱本は「発言の不適切さは事故の相手方との関係で会社の利益を損なうと言う意味で使用されている。よって、調査結果が原告に対するパワハラの根拠となるものではない」と主張する。

交通事故の過失割合は、当事者同士の話し合い(一般的には、双方の加入している保険会社同士)で決まり、これによって双方の損害弁償額が決まる。故に会社に不利益だったがパワハラではない、というのが被告の主張である。
  しかし社員の処分の量刑が弁償額によって決まる以上、相手との交渉結果は原告にも影響したのである。現に原告はこの事故を理由にスキル認定の結果、時給を下げられたのだ。

被告の主張は会社に不利益をもたらしかねない、という点で不適切だったと認めるが、原告との関係ではどうなのかという事については全く触れていない。
  正直ではある。会社に対しては忠誠心を吐露しているが、部下の心情は考慮しない。
  この様な人物を上司として迎えた福山局の社員こそ、交通事故に遭遇した様なものであろう。

(郵政産業ユニオン呉支部機関紙2月4日号より転載)