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新人事・給与制度本格実施―何が問題か    (04.03)
労契法18条と新一般職問題

新人事・給与制度は去年4月からスタートしたが、この一年間は新制度のうち人事評価と業績手当を先行させた、いわば「お試し期間」。基本給の改定と退職手当のポイント制への移行は今年6月の賃金支給からである。
  基本給は役割基本給と役割成果給に分割され、後者は「実績」次第で伸縮する。成果主義賃金としての新制度がいよいよ全姿を顕わすことになるのであり、それが職場に何をもたらすかを私たちはこれからも具体的に追いながら反撃の糸口をさぐっていきたいと思う。
  本稿ではすでに導入されている「新一般職」について改めて考えてみたい。それは労働契約法18条と密接にリンクし、さらには同20条とも絡んでくるからである。

去年4月に月給制契約社員から新一般職に登用されたAさんのケースについて、同年8月15日にWeb伝送便に紹介されている(『非正規より正規のほうが賃金が安い?』千代田良和)が、本誌には誌面化されていない。それはこういうものであった。

 新一般職の賃金は低すぎる

大阪で郵便外務の仕事をしているAさん(30歳)は5月の「給与支給明細書」を見て目を疑う。4月の賃金の振込額が13万6900円でしかなかったからだ。4月の明細(つまり3月分の賃金額)では21万5177円が振り込まれていたのに、8万円近い減収である。
  3月までは月給制の契約社員として基本給は26万940円。時給換算すれば1505円だった。通勤手当や祝日給がそれに加算され、また保険や税金が引かれた結果が前記した21万数千円である。
  いっぽう新一般職の賃金水準は郵貯や簡保も含む郵政グループ全体の平均で30歳では16万2600円。今回Aさんが手にした4月分の基本給は15万9600円だった。それにやはり足したり引かれたりしたら、13万6千円ちょっとしか残らなかったのである。

どうしてこんなことになったのか。
  「狭き門」を突破して新一般職に登用されたのだから、月給制契約社員だったときのAさんのスキル評価は当然高かった。時給換算して1505円というのは最高ランクである。いっぽう、新一般職としての基本給を時給換算すれば1055円でしかない。つまり新一般職登用にあたって非正規雇用だったときのスキル評価による加算分をほぼ剥ぎとられてしまったのだ。
  非正規雇用としてのハダカの基本賃金に戻した上で、それと大きくは違わないところに新一般職の賃金が設定されたのである。呆れた話だけれども、労働契約法18条が指し示すラインがここにはほぼ貫かれている。

労働契約法は2012年に改正されて新たに次の三つのルールを加えた。
  一つは無期労働契約への転換(18条)である。連続5年を越えて働いた有期雇用労働者が申請すれば、会社はその人を無期雇用にしなければならない
  二つ目は「雇止め法理」の法定化(19条)で、有期労働契約であっても反復更新によって期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態に至った労働契約は、単に期間が満了したというだけでは雇止めはできない。
  そして第三が不合理な労働条件の禁止(20条)であって、有期労働契約者であるという理由だけで期間の定めのない労働者と労働条件について不合理な相違があってはならない。

労契法18条の功と罪

このうち第三の20条を武器として正規・非正規の差別をなくすべく立ち上がったのがメトロコマース及び郵政の労契法20条裁判であるのは言うを俟たない。また19条の雇止め法理の法定化にも文句はない。問題は18条である。

まず、無期への転換を嫌がる会社が契約期間5年の満たされる前に雇止めに出ることが危惧された。とともにもう一つの問題は、無期への転換はそれだけでは賃金など労働条件の改善は何ら伴わないことである。ただ契約期間の定めが無くなるだけだ。それは雇用の安定という点では一歩前進ではあるけれど。

じつは正規雇用と非正規雇用を何が分かつかは案外曖昧である。法律で厳密に線が引かれているわけではないからだ(そこで「名ばかり正社員」なんて現象も生じる)。
  敢えて言えば、企業がその労働者を自社のメンバーと認めればそれが正規雇用ということである。その「認定」に伴い、定期昇給とか各種保険とかの待遇整備がなされることになる(「名ばかり」はここに手を抜く)。

労契法18条による無期への転換は、それだけでは正規雇用化ではないけれども、会社がその気になれば正規雇用とすることは可能だし、18条によって生まれた無期労働者はその核になるということだ。
  郵政の新一般職に限らず、世に拡がりつつある限定正社員はこれに対応する。JP労組の今年の春闘要求内容では5番目に『ワークルールの確立』という項目を設け、「労働契約法の改正に伴い、有期雇用契約労働者の無期労働契約への転換について、以下にもとづき早期に協約化をはかること」として、
ア.期間雇用社員の無期労働契約への転換は法律(五年)より短い期間とすること
イ.すでに五年を経過している期間雇用社員については無期労働契約に転換すること
ウ.無期転換後は、原則、正社員とすること
エ.労働契約法改正の趣旨に照らし、労働諸条件について、労使協議のもと点検し、必要な改善を行うこと
 を求めているのは、その含みであろう。

問題なのは、先ほどAさんの例で紹介したような新一般職の低賃金に対する問題意識がこの要求項目からは希薄なこと。これでは要求が通ったとしてもそれは非正規と変わらない、あるいはもっと賃金の低い正規雇用労働者を量産することになってしまう。それでいいのか。

会社が明らかにしている労働力構成の「あるべき姿」(2013年の物数調査にもとづくもの)では、地域基幹職が5万8300人、新一般職が4万1100人、非正規雇用が7万5700人である。
  地域基幹職と新一般職とを合わせた正規雇用約10万人というのは現在とそれほど変わらず、ただ正規雇用の内部で低賃金正規が増えるだけ。
  JP労組の要求に前進があれば非正規から新一般職への移行は進む。併せて必要なのはその賃金を地域基幹職と遜色ないものに高めていくこと、3区分のうち一番数が多い非正規雇用労働者の賃金も上げることである。

会社の意図するところは、非正規と変わらない、あるいはもっと低い賃金の新一般職をもってして、ここにおいて労契法20条が謳う正規・非正規の均等待遇が実現していると強弁することであろう。
  これは転倒である。こんな転倒を許さないことが私たちには問われているのだ。
  郵政産業労働者ユニオンが取り組んでいる20条裁判はそうした闘いになるものであろうし、JP労組の中にあっても会社の意図を打ち砕く闘いを起こしていこう。

   (土田宏樹)